ハワイ・ハレアカラ山頂に惑星大気観測専用望遠鏡T60観測施設を開所(2014年9月)

インタビュー Interview

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Vol.1 イベントレポート


ハワイ・ハレアカラ山頂に惑星大気観測専用
望遠鏡T60観測施設を開所(2014年9月)


ハレアカラ山頂でT60観測施設開所式

 東北大学は、国内唯一の惑星大気観測専用望遠鏡(口径60㎝)を、飯館観測所(福島県飯舘村)から米ハワイ州マウイ島のハレアカラ山頂(標高3,055m)へ移設し、9月に現地で開所式を行いました。開所式には、東北大学やハワイ大学などから約25人の関係者らが出席。現地の司祭によるハワイの伝統的なセレモニーが行われ、新しい惑星観測基地の完成を祝いました。

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 挨拶にたったハワイ大学のギュンター・ヘイシンガー天文学研究施設所長は、「日本の東日本大震災の復興に貢献しようと、今回の支援に至った。同時に我々の共同プロジェクトの第一ステップでもある。今後も連携を深めたい」と述べました。続いて、東北大学の早坂忠裕理学研究科長は、ハワイ大学からの支援に感謝の意を述べ、「若手研究者や学生が長期滞在しながら共同研究する意義は大きい。今後も研究のみならず教育でも連携を深めたい」と語りました。その後、東北大学とハワイ大学との間で、科学協力合意書が締結されました。

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 ハレアカラ山頂は、約7割の高い晴天率に恵まれた、世界有数の天体観測適地です。自前望遠鏡の設置により、惑星の大気の変化や惑星オーロラなど、時間変動や季節変化がある現象を好条件で連続観測することができます。移設にあわせ、赤外観測で世界最高分解能の分光装置(赤外のレーザーへテロダイン超高分解分光装置)も開発。惑星から放射される赤外線を調べることで、惑星の微量な大気や、風速や温度を高精度に計測することができます。装置は望遠鏡に実装され、火星大気からの信号の取得(ファーストライト=初受光)にも成功しました。さらに最先端技術を搭載した惑星・系外惑星専用望遠鏡「PLANETS」(口径1.8m)もハワイ大などと国際協力で開発を進めており、2016年にはハレアカラ山頂に新たな観測拠点が誕生する予定です。

 ハレアカラ山頂に移設した望遠鏡と飯舘村に残した電波望遠鏡は、仙台市にある同センターから遠隔操作できるよう改良されています。同センターの坂野井健准教授は「今後も飯舘村との交流を続け、恩返しができるよう、良い研究成果をあげたい」と話しています。

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関係者インタビュー

早坂忠裕理学研究科長の話

 科学のブレイクスルーには異なる発想の人たちと一緒に研究することが大切だ。普段とは異なる視点の発想力を身につける意味でも、今回のような海外長期滞在は若手研究者や学生たちにとって大きな意義があるだろう。

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プロジェクトリーダーの坂野井健准教授の話

 60cm望遠鏡移設までの道のりを考えると感慨深いものがあるが、これは一つのゴールであると同時にスタートでもある。これから分析装置を開発し、世界トップクラスのサイエンスができるよう、実績を積んで、次の「PLANETS」望遠鏡計画にもつなげていきたい。

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60㎝望遠鏡の移設に大きく貢献した鍵谷将人助教の話

 まだ誰も観たことのない現象を観たい。そのために、自分はやるべきことをやっただけ。予算も限られる中、かつ全体像を把握する上でも、各種手続きから木材切り、鉄筋組立やペンキ塗りまで、海外で自ら行った経験は糧になった。

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分光装置を開発し初受光に成功した中川広務助教の話

 開発した分光装置が無事動いて、大変嬉しかった。この分光装置を東北大が開発し始めて26年、ハレアカラ移設に伴い惑星観測が初めて成就したことは感慨深い。さらに高い質のデータを取得し、成果を披露できるよう頑張りたい。

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着想から26年、念願の観測基地完成 岡野章一名誉教授の話

 着想から26年、ハレアカラ山頂に念願の惑星観測基地が完成した。しかし本当の意味でのリタイアは、「PLANETS」が完成してから。あとは、若い人たちが新しい観測施設をフルに使って惑星の謎を解き明かしてくれることが、今の私の願いだ。

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「ゴールであり、スタートである」 笠羽康正教授の話

 歴史的に評価されるのは、これから出す結果。最終的にその価値を決めるのは今回ここに来れなかった人間だ。若い世代が情熱を受け継ぎ拡大して、国際的にも意味のある仕事ができるよう、僕ら世代も頑張らなければいけない。

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惑星プラズマ・大気研究センター長の小原隆博教授の話

 学生の研究と教育にハレアカラ惑星観測施設開所は大きく貢献できるだろう。同時に、飯館観測所の電波望遠鏡の高性能化も進めている。光学望遠鏡と電波望遠鏡の両面で、本センターとして非常に有意義な第一歩を踏み出した。

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