研究プロジェクト
T60(プロジェクト)
IPRT (プロジェクト)

IPRT(飯舘惑星電波望遠鏡)は、木星放射線帯の高エネルギー電子から放射されるシンクロトロン放射の時間変動を観測するために2001年に開発された大型電波望遠鏡です。
木星シンクロトロン放射の連続観測を行い、電波強度やスペクトルの変化から、放射線帯粒子の加速過程、輸送過程を解明します。
木星シンクロトロン放射に加え、太陽電波バーストのモニタ観測やパルサー観測を実施しています。太陽電波バースト観測から、太陽系内の宇宙放射線環境の理解を目指します。近年は、SKA (Square Kilometre Array)への参画を目指した超長基線電波干渉計(VLBI)観測を進めています。
オーロラ (プロジェクト)

LAMP-2 ロケット計画による脈動オーロラと中層大気の観測
オーロラの種類の一つに「脈動オーロラ」と呼ばれる明滅するオーロラがあります。近年、「脈動オーロラ」が起きるときに「キラー電子」と呼ばれる、エネルギーが数百キロ電子ボルト以上の超高エネルギー電子も同時に降ってきている仮説が示されました。この「キラー電子」は、低い高度数十 kmの中層大気まで入り込み、その場所のオゾンを破壊する可能性があります。
私たちは、2015 年からアメリカの研究者と議論を重ね、LAMPロケット実験の提案をNASAに行い、採択されました。PPARCは搭載カメラ2台の開発を担当しました。ロケットは、アラスカ州のポーカーフラットから2022 年3 月 5 に、大きなオーロラ爆発の直後に発生した「脈動オーロラ」に突入して観測することに成功しました。この観測により世界で初めて「キラー電子」とオーロラ発光の一対一対応が明らかになりました。
この成果を受けて、現在私たちは次のLAMP-2ロケットの準備を進めています。LAMP-2ロケットでは、地上レーダーや光学観測との連携の強化が計画されています。

地上からの全天カメラによる多波長観測は、オーロラの形態などを知るために重要です。極地研究所は第X期重点研究(オーロラXプロジェクト:2022~27年度)を進めています。極冠地域では太陽風と大気の直接的な相互作用が起こり、数百eV(太陽風)からMeV(SEP)までの広範なエネルギー範囲で電子とイオンの降下が発生します。
私たちは、このプロジェクトのための全天カメラを開発しました。2023年から昭和基地で4台、2025年からオーストラリアのケーシー基地とディビス基地でそれぞれ2台、フランス・イタリアのデュモン・デュルヴィル基地とコンコルディア基地でそれぞれ2台の計10台の全天カメラ観測が開始されています。
さらに、2024年から北極ノルウェーで4台のカメラの観測が、福島・飯舘観測所でも低緯度オーロラのための全天カメラ観測が開始されました。これらの総合観測から、オーロラ現象の解明を進めています。

OCTAVES (Observation of CondiTion of Ionized Atmosphere by VLF Experiment)は、電離圏下部の電子密度変動を検出するVLF/LF電離層観測ネットワークです。現在、北欧2箇所、北米3箇所、日本国内2箇所、東南アジア3箇所の計10箇所で観測を実施しています。
低周波(LF)や超低周波(VLF)の電波は、地表と電離圏下端(約70-90km)の間を長距離伝搬します。電離圏下端の電子密度が変化すると受信信号の振幅や位相が変化するため、LF/VLF帯電波観測は地球の下部電離圏の電子密度変化を引き起こす現象を捉える「検出器」と見立てて、次のような科学的観測を行うことができます。 (1)放射線帯から地球大気への高エネルギー粒子の降下現象、(2)中層・上層大気への雷の影響、(3)地球大気への太陽X線フレアや太陽プロトン現象の影響、(4)日食や、下層大気から伝搬する大気重力波・音波の下部電離層への影響、(5)ガンマ線バーストの検出。
ネットワークや研究成果の詳細情報はこちら >> ( https://pparc.gp.tohoku.ac.jp/research/vlf/)
探査機 (プロジェクト)

FACTORSは地球の極域数千kmを2つの衛星で編隊飛行する計画です。
この領域の宇宙環境は、オーロラの微細で複雑な形状に表されるような領域間結合が多様な時間・空間スケールで発現し、宇宙空間物質の加速と輸送、それらに関わる波動の励起・伝搬、電場と電流構造が形成され、相互作用していることです。これらは、磁場を持つ惑星圏の形成や大気進化に関わる基本的かつ普遍的な機構と考えられます。
FACTORSには、磁場、電場、プラズマ粒子計測計等に加えて、PPARCが担当するオーロラカメラを搭載します。れいめい衛星やロケットに搭載したカメラの実績を生かし、従来の衛星観測よりも高感度・高空間分解能をもつ可視と紫外の2種類のカメラにより、オーロラの微細構造の観測が計画されています。

LAPYUTAは、宇宙科学研究所・公募型小型計画のプリプロジェクト候補として検討を進めている紫外線宇宙望遠鏡計画です。宇宙の生命生存可能環境(目標1)と宇宙の構造と物質の起源の理解(目標2)を目指し、以下の4つの科学目標、(1)太陽系内天体の生命生存可能環境, (2)地球型系外惑星の大気,(3)近傍銀河の形成過程,及び(4)宇宙における重元素の起源、を掲げて検討を進めています。
これらの科学目標を達成するため、水素、酸素、炭素の輝線を含む110-190nmの真空紫外波長域で、高い空間解像度と波長分解能を持つ紫外線宇宙望遠鏡の開発を進めています。打ち上げ目標は2033年です。東北大は望遠鏡および観測装置の光学設計と科学検討の両面でこの計画を主導しています。

「月面天文台」TSUKUYOMI計画は、月面に宇宙電波観測アンテナを多数展開し、地上では地球の電離層に遮蔽されて届かない周波数を含む1-50MHzの電波を観測する月面電波望遠鏡です。
138億年前の宇宙に星や銀河が誕生する以前の「暗黒時代」における中性水素線(周波数1. 42GHzの電波)の信号検出を目指す他、系外惑星系の恒星放射や惑星のオーロラの観測を大目標に掲げています。
2020年代に試作初号機を実現し、2030年代の終わりまでに、月面に10基以上からなる自立アンテナ群を展開することが目標です。東北大学はこれまでの惑星電波受信機の開発経験を活かし、開発に参画しています。