プレスリリース:水星の電子加速とオーロラの源を解く 〜 コーラス波動を初発見!
(文責: 笠羽)
2025年末の水星周回開始に向けて太陽系を飛翔中の日欧共同水星探査機BepiColombo。日本は、水星磁気圏探査機みお(以下,みお探査機と呼称)を提供しています。
BepiColomboは、年に一度、水星に最接近 (flyby) してその重力で減速し、少ない燃料消費で大探査機を持ち込もうとしています。この探査機には、本センター・笠羽康正教授が責任者を務める電磁波観測器PWIが搭載されており、史上始の電磁波動観測が試みられる予定でした。
周回開始まではアンテナをきちんと展開できない不完全な状態ですが、BepiColomboの第一回(2021年)・第2回(2022年)の水星接近観測で、この装置は世界で初めて電子を効率よく加速,散乱させる強い電磁波(コーラス波動)を水星朝側約1,200km内で検出しました。
コーラス波動は、水星の磁場に捕まった高エネルギー電子を産卵させ、水星表面へ落としてX線を放射(X線オーロラを発生)させます。この成果は、X線オーロラの駆動源が実はコーラス波動であったことを直接示すものとなりました。
本研究は、金沢大の尾﨑光紀准教授がデータ解析の中心となり、金沢大・東北大・京都大・宇宙航空研究開発機構、マグネデザイン(株)、およびフランス・プラズマ物理学研究所のみなさんからなる国際共同研究の成果です。2023年9月14日16時(英国時間)に、科学誌 『Nature Astronomy』 に掲載されました。
[出版論文] Ozaki, M., S. Yagitani, Y. Kasaba, et al. Whistler-mode waves in Mercury’s magnetosphere observed by BepiColombo/Mio. Nature Astronomy, https://doi.org/10.1038/s41550-023-02055-0 (2023) [図] 水星でのコーラス波動発生のイメージ (水星の画像Credit: NASA / Johns Hopkins University / Applied Physics Laboratory / Carnegie Institution of Washington) [東北大プレスリリース] https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2023/09/press20230915-01web-Mercury.html [東北大・理学研究科] https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20230915-12856.html [金沢大: PDF] https://www.kanazawa-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2023/09/230915.pdf [京都大] https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2023-09-15-1 [JAXA] https://www.isas.jaxa.jp/topics/003536.html