海王星の大気温度〜予想外の変化が明らかに

海王星は思ったより冷たい - 大気温度の予想外の変化が明らかに

海王星の大気温度が過去 20 年間で予想外に変動していたことが、すばる望遠鏡などの大型望遠鏡による中間赤外線の観測から明らかになりました。
海王星の1年は165年弱。20年は1/8年に過ぎません。
発見からようやく「1年」が過ぎたこの海王星で、このような大規模な気温変化が捉えられたのは今回が初めてです。

この研究結果は、東北大学、国立天文台、英・レスター大学や米・NASA ジェット推進研究所 (JPL) の惑星科学者らによる国際研究チームが、過去約 20 年にわたって得られてきた海王星の中間赤外線画像すべてを網羅的に解析して得たものです 。
この一翼を担ったすばる望遠鏡のデータは、2011年、2012年、そして2020年に、すでに共同利用運用を終了した冷却中間赤外線撮像分光装置 COMICS によって取得されたものです。
特に、急激な温度上昇の発見につながった、コロナ禍中の2020年7月のデータは、まさにこの装置の「ファイナルライト」で得られたものでした。
この観測を行った笠羽康正博士 (東北大PPARC) と藤吉拓哉博士 (国立天文台ハワイ観測所) は、「最後の機会ということで、木星、土星、天王星、海王星のデータを丁寧に取得していきました。その中からこの貴重な発見を得たのは誠に驚きであり喜ばしいことです」とコメントしています。
日本の望遠鏡での中間赤外線域の観測は、現在チリで建設途上にある東京大学・アタカマ 6.5メートル望遠鏡 TAO に引き継がれていく予定です。

本研究成果は、『プラネタリー・サイエンス・ジャーナル』に2022年4月11日付で掲載されました。

Roman, M.T., L.N. Fletcher, G.S. Orton, T.K. Greathouse, J.I. Moses, N. Rowe-Gurney, P.G.J. Irwin, A. Antuñano, J. Sinclair, Y. Kasaba, T. Fujiyoshi, I. de Pater, H.B. Hammel (2022). Subseasonal Variation in Neptune’s Mid-infrared Emission. Planet. Sci. J. 3:78. https://doi.org/10.3847/PSJ/ac5aa4

詳しくは下記をご覧ください。

国立天文台 プレスリリース: “海王星は思ったより冷たい - 大気温度の予想外の変化が明らかに” / (Neptune is cooler than we thought: Study reveals unexpected changes in atmospheric temperatures)

University of Leicester Press Release

European Southern Observatory Press Release

(文責:笠羽)