宇宙空間で電波を生み出す陽子の集団を発見 ~JAXAの人工衛星「あらせ」の観測と解析から~ (2021/7/9)
(記:笠羽)名古屋大・宇宙地球環境研究所の小路真史助教ほか国内外の研究者と進めている共同研究で、JAXA・宇宙科学研究所の科学衛星「あらせ」の観測データから、宇宙空間で電磁波を生み出すイオン(陽子)の集団を検出することに世界で初めて成功しました。
本研究成果は、2021年6月29日付でNature系学術誌「Scientific Reports」に掲載されました [https://www.nature.com/articles/s41598-021-92541-0]。詳しくは以下のプレスリリースをご覧ください。
科学衛星「あらせ」は、本研究科・小野高幸名誉教授を始めとするメンバーが中核を担ってきたもので、地球周辺の宇宙空間に広がる高エネルギー電子が蓄積される「バンアレン帯(放射線帯)」の成因を調べ、電子と電磁場を同時観測してその相互作用を解明しつつあります。
本プレスリリースの成果は、私が開発の責任を担ったPWE(電場・プラズマ波動観測機)によるものです。本論文開発された手法は、2025年到着を目指して水星に向かいつつある日欧共同BepiColombo探査機、2022年打上を目指して最終試験に向かいつつある欧州木星探査機JUICEに東北大が搭載する電磁場観測装置にも適用されていきます。両探査機には「あらせ」から発展した本学開発の観測装置が搭載されており、将来につながる貴重な成果です。
本論文の主役、名大・小路さんは私の出身研究室の(はるか)後輩でもあり、またBepiColombo・JUICEでの活躍も期待しております。
東北大学プレスリリース: https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2021/07/press20210709-02-arase.html
東北大学・理学研究科広報: https://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20210709-11649.html
<論文> Shoji, M., Y. Miyoshi, L.M. Kistler, K. Asamura, A. Matsuoka, Y. Kasaba, S. Matsuda, Y. Kasahara, I. Shinohara (2021). Discovery of proton hill in the phase space during interactions between ions and electromagnetic ion cyclotron waves. Sci. Rep. 11, 13480. https://doi.org/10.1038/s41598-021-92541-0