Austria Graz出張:欧木星探査機JUICE / RPWI 全体チーム会合 (2019/9/23-27)
(文責:笠羽)
パリ天文台でのお仕事を経て、PPARCの笠羽教授・三澤准教授・土屋助教、および後から合流した宇宙地球電磁気の加藤教授の4名で、Austria は Graz で行われました「欧木星探査機 JUICE / RPWI 全体チーム会合」に出席してまいりました。
Grazは、町の中央に古城がそびえたつ、古風な街ですが、オーストリア第二の規模。Wienから電車で2−3時間、イタリアへの途上にあります。
会合は、この町にある オーストリア科学アカデミー・宇宙科学研究所 — Institut für Weltraumforschung (IWF) で、5日間に渡って非常に密度濃く行われました。
JUICEは、2020秋口から始まる探査機の全体試験に向けて、各チームで急速にフライトモデルを製造しつつあります。この会合では、(1) フライトハードウェアの製造・試験状況と来夏に向かうスケジュール、(2) この上で動くソフトウェアのシミュレータによる開発・試験の状況、(3) 深宇宙へと飛翔するにたるこれらの品質保証、(4) 木星周回、ガリレオ衛星フライバイ、そしてガニメデ周回における科学観測の提案検討・・・
我々は、毎週、テレビ・音声会議で相当量の議論を定期的に積んできてるのですが、それでもこれだけの議論・確認事項が出るのか・・・ということで、疲れましたが、実際には、この先がもっととても大変ではあります。
オーストリア・IWFチームが開発した「JUICE探査機の電波特性試験用」の模擬機。結構大きく、しかも金メッキされておりピカピカです。
我々のアンテナが持つ電波指向特性を計測し、計算機シミュレーションと合わせます。実際の確認は、打ち上げてから太陽電波などを使って行います。
水曜日に撮影された「RPWIチームメンバー集合!」の写真。31名写っていますが、ここに来ていないメンバーも確実にこの倍はいます。
こうした観測機器チームが11あり、さらに探査機そのものを製造しているチームがおり・・・全体では軽く200名は越えるメンバーの努力の結晶です。
なお、欧メンバーは金夕にはそれぞれの帰途へとついたのですが、ユーラシア大陸を横断してはるばる帰る日本組と、土曜朝に帰ることにしたJan Bergman (スウェーデン)は、地元IWFの Georg Fischer (金ピカJUICEの開発・試験をした人でもあります)に、Graz市内を案内いただきました。
古い城・古い教会・古いパン屋・・・・とのんびり歩いて回ったのですが、Scientistsとしての目玉は「ヨハネス・ケプラー」にまつわる場所の探訪。
ケプラーは、最高の眼視観測者(望遠鏡がフルに使われる直前の時代でした)であったチコ・ブラーエの膨大な火星の位置観測データを引き継いで、「惑星は楕円軌道で太陽の周りを巡っている」ということ発見した人です。この発見は、「楕円軌道を回るには、逆自乗力が太陽と惑星の間に働けばよい」というニュートンの「重力の発見」へとつながりました。
このケプラーさん、若かりし頃、神学校(グラーツ大学の前身?)の先生としてGrazに赴任し、働いています (1594?-1600?。関ヶ原の戦い前夜ですね。)「とてもいけてない先生だった」との地元民評。
「ケプラーの旧宅」であることを示す表示。今は、単なる「写真店の倉庫」の奥。Georgいわく「この上がGraz写真クラブ?で、子供の頃通っていたのでよく知っている」とのことだが、普通は絶対にこんなところにそんなものがあるとは気がつくわけがないぞ。
城の一部をなす公園には、ケプラーの碑。その前には「ケプラーの第三法則」を示す花壇が。
木星を目指す人々と、ケプラー氏。ひとまず、このおじさんの見つけた事実なくしては、我々は木星には行けていません。彼に乾杯を捧げ、みなさんでビールを飲んで夕ご飯を食べ、解散しました。
帰国して次の日、9/30(月)には我々が仕上げた「電波プリアンプ・フライト予備品の出荷審査会」。無事終了し、Grazで行った約束の1つを果たしました。
次いで、実際にフライトするプリアンプの耐環境試験に突入。10/1には振動試験に立ち会い。10/4-10/10には温度試験。。。
と、相変わらずブラック労働の日々を、みなさん(含む大学院生)と繰り広げております。