PPARC セミナー (2024/10/18)

PPARC セミナー (2024/10/18)

(1) Yoji Kuwayama

[Title]  
メートル波太陽・惑星電波観測用広帯域フィードシステムの開発

[Abstract]  
惑星プラズマ・大気研究センターでは 2001 年より物理開口面積が 1000平方m 強の飯舘メートル波帯電波望遠鏡 IPRT を運用してきたが、現在、より広帯域での高感度化に向けてフィードシステムの開発を進めている。
近年の大型電波観測装置の更新や開発により、今後一層の展開が期待される低周波数 VLBI 観測推進に向け、広帯域フィードの高効率化は重要になってきている。そこで、当グループでは、高感度観測用と広帯域観測用フィードを統合し高効率化を目指す、新たな 100-700MHz 帯用フィードシステムの開発に着手している。
これまで、SKA-MID band-1 用フィードとしても検討報告がある (c.f. de Villiers, 2017)、自己補対形の 4アームsinuous アンテナをモデルケースとして、電磁界解析ソフト FEKO を用いて設計検討を行ってきた(暫定目標:325 & 650MHz 帯で 60 % 以上、全周波数帯で 40 % 以上)。全周波数帯で 50 % 以上の開口能率が期待される解が見い出せている。2024年度からは1/4スケールモデルの製作と実測に基づく特性評価を行っている。
本発表では、修士論文にむけた構成にて、開発の現況を紹介する。


(2) Hikaru Suzuki

[Title]
南極昭和基地ミリ波分光放射計を用いた高エネルギー粒子降下による南極昭和基地上空での中間圏オゾン変動の解析

[Abstract]
地球極域では、太陽フレアやコロナ質量放出に伴う太陽高エネルギー粒子の発生や、磁気嵐に伴う磁気圏内の高エネルギー電子の散乱などによって、高エネルギー粒子の大気への降り込み(EPP)が起こる。これらの粒子が引き起こす大気分子のイオン化反応の結果、窒素酸化物(NOx)や水素酸化物が生成され、それらが触媒として働き、中間圏のオゾン(O3)を破壊すると言われている。さらに、EPPはO₃に対して、前文で述べた直接的な影響だけでなく、中層大気の輸送効果によって間接的に下層に存在するO₃に影響を与えてしまう可能性もある。具体的には、下部熱圏などで生成されたNOxが、極域の冬の大気下降輸送によって上部成層圏に到達し、触媒としてO₃破壊してしまうなどの反応である。O₃は、広い高度領域にわたり分布する成分であり、気候や大気輸送に影響を与えている非常に重要な物質である。したがってEPPによるO₃変動の調査が必要である。本研究の目的は、EPPに伴う中間圏の夜間O₃濃度減少を観測により明らかにすることである。この研究は、EPPが中間圏のO₃破壊に直接的な影響を与えているかどうかの実証に貢献する。また、EPPやそれに伴う地球大気のイオン化反応と極域の夜間のO₃破壊が、化学反応や輸送過程を介して、気候システムに与える影響を明らかにすることにも貢献すると考える。本セミナーでは、これまでの解析結果と修士論文の目次(予定)、今後の計画を報告する。