PPARCセミナー(2024/06/10)
PPARCセミナー(2024/06/10)
(1)
[Name] Shinnosuke Satoh
[Title]
木星磁気圏プラズマシートの経度方向構造が衛星エウロパに与える影響について <現状と課題の整理>
[Abstract]
衛星エウロパは表面を水氷で覆われた天体である。内部にエネルギー源を持たないが、その公転速度よりも速い速度で共回転する木星磁気圏から高エネルギープラズマの照射を受けることで外的にエネルギーを獲得し、希薄大気の生成と損失を常に経験し続けている。生命存在可能性が広く議論される中、エウロパ大気と木星磁気圏の結合について時空間的に理解することはエネルギー供給の観点で非常に重要である。
衛星イオおよびエウロパを起源とする重たいイオン(硫黄や酸素)は、磁場のミラー力と共回転に伴う遠心力を受け遠心力赤道と呼ばれる領域に集中して存在している(= プラズマシート)。重たいイオンで満たされたフラックスチューブは遠心力を駆動源とする交換性不安定によって動径方向外側に輸送される。また、磁気圏の遠方から内側に向かって高エネルギープラズマが注入(インジェクション)されることも知られている。こうしたプラズマの動径方向輸送によって、プラズマシートの構造は動径方向だけでなく経度方向にも分布を持つことが、観測的・数値計算的に分かっている。
エウロパの電離圏は、主に中性大気と磁気圏プラズマの衝突による電離反応によって生成される。これは大気の視点では損失過程の一つである。これまでに行われてきた数々の数値計算研究は、プラズマシートを経度方向に一様とみなして、エウロパと磁気圏の相互作用について議論を行なってきた。しかし、先に挙げたプラズマシートの経度方向構造はエウロパの大気損失過程に直接影響しうるものである。そこで本研究では、プラズマシートの経度方向構造を取り入れた多流体モデル計算を行うことで、エウロパ電離圏の形成過程(大気の損失過程)の理解を進めることを目的としている。
本セミナー発表では、木星磁気圏プラズマシートの経度方向構造に関する観測的・数値計算的な知見をまとめた上で課題の整理を行う。
(2)
[Name] Rentaro Sugawara
[Title]
木星電波nKOMの識別と磁気緯度依存性
[Abstract]
木星磁気圏内からは様々な種類の電波が放射されている。その中のIoトーラスを電波源とし、100kHz付近で放射されるnKOMに着目する。私の研究では木星探査機Junoの極軌道を利用し、nKOMの磁気緯度依存性を確認することを目指している。データは観測開始から今まで全てのものを利用する。nKOMはダイナミックスペクトルによって識別され、発表ではその識別手順を主に説明する。