太陽からの中性子を観測しています
先刻、太陽からのニュートリノ(中性微子)の観測で、東大宇宙線研の梶田所長が、今年のノーベル物理学賞を受賞されました。大変、喜ばしい事と、思っております。
私達は、太陽からの放射線粒子や中性子の観測を、国際宇宙ステーション・日本実験棟(きぼう)の暴露部で、2009年から行っています。図の左端・先端の部分に飛び出ているのが、私も担当している、宇宙環境計測装置(SEDAと言います)です。
人工衛星や宇宙飛行士が活躍する宇宙空間は、とても危険な空間です。そこには、宇宙放射線(太陽から来る放射線、遠い銀河からやってくる銀河宇宙線、地球の磁場に補足されたバンアレン帯の放射線粒子)に満ち溢れています。そして、プラズマ、原子状酸素、スペースデブリもあり、これらは人工衛星や国際宇宙ステーションに危害を及ぼしています。
宇宙環境が原因となる宇宙機障害は、障害全体の1/4と言われています。そのような背景で、人工衛星が故障を起こさないよう、宇宙飛行士が、危険な放射線の被害に遭わないよう、宇宙環境モニター装置で宇宙放射線環境を監視しています。
幾つかの新しい発見もありました。詳しくは、別の機会に譲りたいと考えていますが、400km高度での、宇宙環境の連続観測は始めてです。2009年からの数年間にわたるゆっくりとした時間変動も観測されています。太陽の11年周期の変動に依存して変化している宇宙環境もありました。
まだ数年間のデータですが、宇宙環境モデルの更新データに利用されはじめています。今後、数年先まで観測を継続し、太陽の全活動周期(11年)に対応した宇宙環境データの取得にチャレンンジしたいと考えています。
(小原隆博)
きぼう暴露部先端に取り付けられた宇宙環境計測装置 ⓒJAXA提供