地球の大気に降り注ぐ宇宙放射線の地上電波観測:ノルウェー編

地球周辺の宇宙空間(磁気圏)から地球大気に高エネルギー粒子が降り込む現象を観測するため、北緯79度のノルウェー・ニーオルスンで低周波電波観測を行っています。8月下旬に、この受信装置のメンテナンス作業のため、修士課程1年の平井さんとニーオルスンに行ってきました。ニーオルスンには国立極地研究所のラベン基地があり、2010年3月に電波受信装置を設置して以来、観測を続けています。3月のニーオルスンは雪に覆われてましたが、8月は雪が消え、雪の下に隠れていて見えなかった氷河やトナカイを間近に見ることもできました。ニーオルスンには白クマもいるので、居住エリアから出るときはライフルを持たなければなりません。
ニーオルスンへの出張後は、日本に3日間だけ滞在した後(さすがにしんどかった)、南アフリカ・ケープタウンで開催された国際学会でニーオルスンでこれまで行ってきた観測・研究成果を発表してきました。
磁気圏での高エネルギー粒子の加速と、加速を受けた粒子が地球の大気に落ちてくるメカニズムにはまだまだ謎が多く、2016年12月に宇宙科学研究所が打ちあげた「あらせ衛星」と地上観測を組み合わせて明らかにしようとしているところですが、高エネルギー粒子が地球の大気そのものに及ぼす影響~窒素酸化物の生成やオゾンの破壊~についても、その証拠が観測から得られ始めていて、今後の研究の進展が楽しみです。(土屋史紀)