冬季の電波観測

数年に一度の規模と言われた先週末からの寒波襲来で、穏やかな年明けから一転して本格的な冬モードに入りました。ここ東北地方も各地で大雪となり、宮城、福島の山間部にある観測所で電波観測を行っている私共にとっては、気の抜けない時節がいよいよ始まりました。と申しますのは、大雪による観測への影響です。私共は、波長が1~15メートル程の太陽や木星、パルサーから到来する電波の観測を行っていますが、この波長帯の電波への雨や雪の影響は殆ど無く、降雪があっても電波観測自体に問題は生じません。では、何が気になるのか? それは(拍子抜けするような答えで恐縮ですが)降雪ではなく、積雪です。

積雪の影響が特に懸念されるのは、福島・飯舘観測所のメートル波帯の大型アンテナ(IPRT)です。この大型アンテナは方位角と仰角方向に駆動可能で、観測対象となる電波源の方向にアンテナを向けながら観測を行っています。観測はプログラム・ベースで自動的に行われており、必要に応じて仙台から遠隔監視・操作する方式で運用されています。積雪の影響が生じるのは特にアンテナ駆動に関してです。大部の積雪がある場合、アンテナ方位角方向の駆動装置への負担を考慮し、観測のための運用を停止させます。仰角方向は、ステンレスのメッシュで出来たアンテナ反射面の保護のために、強風でなければ仰角を変え、アンテナ反射面を立てて、着雪量を減らす等の作業を行います。

観測所のある飯舘村は福島の”浜通り”地方に位置し、福島県内でも雪の多い地域ではなく、平均的には~30cm程度の積雪です。この程度の場合は、駆動系の状態を監視しながらであれば、観測を停止させることなく運用することが出来ます。しかし、数年に一度(今回の寒波もそれでピリピリしている訳ですが)、積雪が1mに達するような大雪になることがあります。最近では、2014年2月の大雪により暫時の観測停止を余儀なくされました(写真はその折りのアンテナの様子です)。今回の寒波による現地の積雪は現時点(1月16日)で~15cm程で、幸い、観測に影響は生じていません。しかし、天気予報によれば今週末にかけて太平洋側でも大雪の恐れがあるとのこと、今後しばらくは観測所の気象・映像モニターを注視しながら観測を行う日々が続きます。

以下、余談ながら。上述したように、大型アンテナの電波観測は自動観測で行われており、観測所に日々出向く必要はありません。しかし、観測内容によって、データ収集や装置設定変更、保守等のために現地へ出向く必要が生じます。飯舘観測所は(除雪が行われる)一般道から、さらに(除雪が行われない)未舗装の林道を1.5km程上った地点に位置しており、重い雪で、その深さが15cmを越えるような場合には車でのアクセスが難しくなります。そうした場合でも観測所に出向かなければならない場合は、カンジキを履いてストックを突きながらの徒歩でのアクセスとなります。今後しばらくは、観測車にこうした冬装備も積みながらの飯舘観測所詣でとなります。

(文責:三澤)