スロットが埋められる!

地球を取り巻く放射線の帯は、発見者の名前をとって、バンアレン帯と呼ばれています。この放射線帯は、図に示しているように、内帯(地球に近い側)と外帯(地球から遠い側)に分離していて、その間の領域はスロットと呼ばれています。

スロットの存在する1万5千キロメートル付近の高さは、中軌道と呼ばれ、静止軌道より少ない衛星数で地球全体をカバー出来る利点があります。さらに中軌道は、スロット領域に対応する事から、放射線量が少ない点もメリットです。

このスロット領域は、次世代のGPS衛星が送られる領域として注目を受けていますが、私達は、JAXA衛星の放射線粒子の詳細な観測から、スロットが「外帯からの放射線粒子の流入によって埋められてしまう」という事を見出し、これが起こるのは、非常に大きな磁気嵐の発生時である事を明らかにしました (Sun and Geosphere, 印刷中)。

増加量は、通常のレベルの1万倍にも達する事があり、人工衛星は危険になります。現在、宇宙天気予報によって、磁気嵐の発生は、1~2日前に分かるようになりました。今後は、スロットの放射線増加量を精度良く予測する事が、必要になっています。

(小原隆博)

放射線帯の2重構造(内帯と外帯) (イラスト提供:フリーマン教授)