水星 詳しくはこちら
金星 詳しくはこちら
金星はかつて大量の水があったと考えられていますが、現在は極めて乾燥した環境となっています。その水の消失の鍵を握るのが、惑星から宇宙空間への「大気散逸」と呼ばれる現象です。
本研究では、太陽から吹きつける高エネルギーの粒子の流れ(太陽風)が、金星を取り巻く水素の大気に与える影響を明らかにすることを目的としています。日本の紫外線宇宙望遠鏡「ひさき」やESAの金星探査機「Venus Express」の観測データを解析することで、水素の分布が時間的・空間的にどのように変化するかを調べています。
特に、太陽風が到来した際に、金星外気圏の水素がどのように反応するかを追跡することで、金星の大気進化の過程や、水の消失の新たな手がかりを得ることを目指しています。
地球 詳しくはこちら
宇宙を飛ぶArase衛星は2017年から地球周りの電子の数と温度を調べています。電場アンテナで拾ったUHRという波の周波数から密度を計算しますが、電子が少ない所では値が低く出がちです。
そこで衛星が帯びる電位や粒子計測、太陽UVの強さを組み合わせて2017〜2022年のデータを比べたところ、静かな時ほど電位と密度がきれいな比例関係になり、温度の影響も見えてきました。
この成果は測定誤差を減らし、2026年に水星へ行くBepiColombo/MMOの観測にも役立ちます。
地球大気の周りに広がっている宇宙空間「ジオスペース」には、地球大気や太陽風が起源のプラズマ(荷電粒子)が存在しています。このプラズマの中を伝わる電磁波を「プラズマ波動」と呼んでいます。
宇宙空間では粒子同士の衝突はほとんど起こりませんが、プラズマ波動と荷電粒子の「衝突」によって、粒子の運動が散乱されます。
散乱された高温の粒子が地球の大気に降り込むと、オーロラを光らせたり、高層大気の組成に影響を与えるので、プラズマ波動の発生や伝わり方を調べることは、宇宙空間と地球大気のつながりを解明する上で重要な研究です。
ジオスペース探査衛星「あらせ」によるプラズマの分布やプラズマ波動の観測、地上からのオーロラの観測などを使って、プラズマ波動がどのようにジオスペースを伝わり、高温の荷電粒子を散乱するのか調べ、宇宙空間が地球大気に及ぼす影響を研究しています。
地球のオーロラ電波であるAuroral Kilometric Radiation(AKR)は、地球磁気圏におけるさまざまな現象や構造と密接に関係しており、地球磁気圏について理解するためのバロメーターとしての役割を果たします。
しかし、AKRに関する長期的な統計解析、特に太陽活動度との相関に着目した研究はこれまで十分には行われていません。
そこで私は、約30年にわたって地球磁気圏を観測してきたGeotail衛星のデータを用いて、AKRの長期統計解析に取り組んでいます。
AKRの発生特性や変動傾向を明らかにすることで、地球磁気圏の理解をさらに深めることを目指しています。
「地球は大きな磁石」って聞いたことがありますか?その磁石が作る“磁気圏”は、私たちを太陽から吹きつける太陽風から守ってくれる、まるでシールドのような存在です。
私はこの磁気圏の中身、特にどんな種類のイオン(電気を帯びた粒子)が、どこに、どれくらい存在するのかを、電磁波“EMIC波”から読み解く研究をしています。現在は「あらせ衛星」のデータを使って、イオンの種類や割合を読み解くことに挑戦中です。
この研究は、2026年に水星へ到着予定の「BepiColombo」や、2031年から木星を周回する予定の「JUICE」など、他の惑星探査にも応用が期待されています。惑星の磁場やプラズマ環境を調べる新たな鍵として、この方法を確立することを目指しています。
私たちは、オーロラ発光を宇宙の地上の両面から観測し、人工衛星や地上レーダーと組み合わせて、総合的な理解を進めています。
とある種類のオーロラでは、とても高いエネルギーの電子が降下し、中層大気に影響を与えうるため注目されています。私たちは、2022年にLAMPロケットを打上げ、世界で初めてこの観測に成功しました。これに続くLAMP-2ロケット計画が進行中です。
一方、太陽風の影響を直接受ける高緯度極冠域は、宇宙天気の観点から注目が集まっています。私達は10台の全天カメラを開発し、南極大陸上を広くカバーする観測ネットワークを構築しました。
火星 詳しくはこちら
私は、火星を周回する探査機Mars Expressに搭載された近赤外撮像分光装置OMEGAのデータを用い、火星の大気を観測したデータの解析を行っています。
フランスのチームと協力して、ダスト雲の厚さやダストの鉛直分布構造、地表面圧力量を導出するシステムを開発しました。
このシステムを利用することで、未解明である火星気象現象のメカニズム解明に貢献しています。現在開発中のシステムは、次世代の火星探査ミッション(特にMMX)にも適用される予定です。
木星 詳しくはこちら
ハレアカラT60望遠鏡で近赤外観測を実施するために、近赤外カメラTOPICSと高分散エシェル分光器(波長分解能~20000)の開発を行っています。この近赤外観測から、木星赤外オーロラやイオ火山・溶岩流出が観測できます。これとT60可視観測と組み合わせて、木星磁気圏内の物質・エネルギー輸送メカニズムの解明に取り組みます。
また、火星のトレーサーガスとなる微量気体成分(メタン・過酸化水素・HDO/H2O)を観測し、ダストストームを含む火星大気環境の物理メカニズムの理解に寄与することが期待されます。
この地上観測は、将来の木星探査機JUICEや火星探査機 MMXなどとの共同観測を行う点でも重要です。
木星の極域には複雑な構造を持つオーロラ発光が存在します。数ある構造の中でも、衛星エウロパに関連した「フットプリントオーロラ」というオーロラ発光は、エウロパ周辺のプラズマ環境が“転写”された現象です。
私は、ハッブル宇宙望遠鏡によって行われたフットプリントオーロラの観測から、エウロパの周辺に存在するプラズマの質量密度や温度の変動を検出することに世界で初めて成功しました。
現在はその続編として、Juno探査機による高空間分解能の観測データを用いて研究を進めています。フットプリントオーロラを詳細に調べることで、衛星周辺プラズマ環境のさらなる理解につながります。
木星は非常に強い磁場を持ち、その磁気圏内部には火山活動が活発な衛星イオから放出されたプラズマが広がっています。
これによりイオプラズマトーラスと呼ばれる構造が形成され、そこからはnKOMと呼ばれる電波が発生します。
私はこのnKOMの出現頻度や強度の長期的な変動を調べることで、インジェクション現象など木星磁気圏内のダイナミクスとの関係性を明らかにすることを目指しています。
木星の衛星のうち、火山活動が活発なイオと、氷で覆われたエウロパに注目しています。イオから発生した硫黄や酸素のイオンは、ドーナツ状のイオプラズマトーラスとしてエウロパ軌道まで広がっていますが、エウロパ周辺での観測には限りがあります。
本研究では、宇宙望遠鏡ひさきに搭載された紫外線分光器(EXCEED)を用いて、エウロパ軌道の硫黄イオンと酸素イオンの輝線を世界で初めて検出しました。
現在は、イオからエウロパにわたる電子密度や温度、イオン組成の空間分布を導出するツールを開発しています。今後は、2015年1月に発生したイオ火山噴火前後でのプラズマ特性の時間変化や、プラズマがイオからエウロパへ輸送される過程を研究していきます。
木星放射線帯では、高エネルギーの電子からシンクロトロン放射と呼ばれる電波放射が起こっている。その強度と周波数は、電子のエネルギー・電子の数密度・磁場の強さに比例することが知られています。
インドのGMRT(Giant Metrewave Radio Telescope)をはじめとした複数の望遠鏡でシンクロトロン放射の観測を行い、木星放射線帯の高エネルギー電子の空間構造およびエネルギースペクトルの推定をすることを目標にデータ解析を行なっています。
土星 詳しくはこちら
本研究では、惑星から放射される電波が衛星の電離圏(電気を帯びた大気層)を通過する際に起こる屈折現象に注目し、その“曲がり方”から電子密度を導く手法を開発しています。
従来の観測手法では測定範囲に限りがありました。そこで、外惑星からの電波が衛星の電離圏を通る経路をコンピュータで再現し、電子密度を逆算する新しい方法を提案しました。
現在はこの手法を応用して、Cassini探査機のデータからタイタン電離圏の電子密度分布を導出しています。さらに、将来のJUICEミッションに向け、電波の偏波(回転の向き)を活用し、精度向上を目指した検討も行っています。