研究紹介
プロジェクト
オーロラの種類の一つに「脈動オーロラ」と呼ばれる明滅するオーロラがあります。近年、「脈動オーロラ」が起きるときに「キラー電子」と呼ばれる、エネルギーが数百キロ電子ボルト以上の超高エネルギー電子も同時に降ってきている仮説が示されました。この「キラー電子」は、低い高度数十 kmの中層大気まで入り込み、その場所のオゾンを破壊する可能性があります。
私たちは、2015 年からアメリカの研究者と議論を重ね、LAMPロケット実験の提案をNASAに行い、採択されました。PPARCは搭載カメラ2台の開発を担当しました。ロケットは、アラスカ州のポーカーフラットから2022 年3 月 5 に、大きなオーロラ爆発の直後に発生した「脈動オーロラ」に突入して観測することに成功しました。この観測により世界で初めて「キラー電子」とオーロラ発光の一対一対応が明らかになりました。
この成果を受けて、現在私たちは次のLAMP-2ロケットの準備を進めています。LAMP-2ロケットでは、地上レーダーや光学観測との連携の強化が計画されています。
LAPYUTAは、宇宙科学研究所・公募型小型計画のプリプロジェクト候補として検討を進めている紫外線宇宙望遠鏡計画です。宇宙の生命生存可能環境(目標1)と宇宙の構造と物質の起源の理解(目標2)を目指し、以下の4つの科学目標、(1)太陽系内天体の生命生存可能環境, (2)地球型系外惑星の大気,(3)近傍銀河の形成過程,及び(4)宇宙における重元素の起源、を掲げて検討を進めています。 これらの科学目標を達成するため、水素、酸素、炭素の輝線を含む110-190nmの真空紫外波長域で、高い空間解像度と波長分解能を持つ紫外線宇宙望遠鏡の開発を進めています。打ち上げ目標は2033年です。東北大は望遠鏡および観測装置の光学設計と科学検討の両面でこの計画を主導しています。
FACTORSは地球の極域数千kmを2つの衛星で編隊飛行する計画です。 この領域の宇宙環境は、オーロラの微細で複雑な形状に表されるような領域間結合が多様な時間・空間スケールで発現し、宇宙空間物質の加速と輸送、それらに関わる波動の励起・伝搬、電場と電流構造が形成され、相互作用していることです。これらは、磁場を持つ惑星圏の形成や大気進化に関わる基本的かつ普遍的な機構と考えられます。 FACTORSには、磁場、電場、プラズマ粒子計測計等に加えて、PPARCが担当するオーロラカメラを搭載します。れいめい衛星やロケットに搭載したカメラの実績を生かし、従来の衛星観測よりも高感度・高空間分解能をもつ可視と紫外の2種類のカメラにより、オーロラの微細構造の観測が計画されています。