木星をテーマにした研究紹介
このページでは、本センターの木星に関する研究を紹介しています。
基礎情報:木星(もくせい、英: Jupiter)は太陽系にある惑星の1つで、内側から5番目の公転軌道を周回している太陽系の中で大きさ、質量ともに最大の太陽系第5惑星です。木星およびそれと同様のガスを主成分とする惑星(ガス惑星)である土星のことを木星型惑星(巨大ガス惑星)と呼びます。周期は11.86年であり、これは土星の5分の2に相当します。この2つの巨大な木星型惑星は、その公転周期が軌道共鳴5:2の関係にあります。木星は、太陽輻射で受ける熱よりも多い熱量を放射しています。
ハレアカラT60望遠鏡で近赤外観測を実施するために、近赤外カメラTOPICSと高分散エシェル分光器(波長分解能~20000)の開発を行っています。この近赤外観測から、木星赤外オーロラやイオ火山・溶岩流出が観測できます。これとT60可視観測と組み合わせて、木星磁気圏内の物質・エネルギー輸送メカニズムの解明に取り組みます。
また、火星のトレーサーガスとなる微量気体成分(メタン・過酸化水素・HDO/H2O)を観測し、ダストストームを含む火星大気環境の物理メカニズムの理解に寄与することが期待されます。
この地上観測は、将来の木星探査機JUICEや火星探査機 MMXなどとの共同観測を行う点でも重要です。
木星の衛星のうち、火山活動が活発なイオと、氷で覆われたエウロパに注目しています。イオから発生した硫黄や酸素のイオンは、ドーナツ状のイオプラズマトーラスとしてエウロパ軌道まで広がっていますが、エウロパ周辺での観測には限りがあります。
本研究では、宇宙望遠鏡ひさきに搭載された紫外線分光器(EXCEED)を用いて、エウロパ軌道の硫黄イオンと酸素イオンの輝線を世界で初めて検出しました。
現在は、イオからエウロパにわたる電子密度や温度、イオン組成の空間分布を導出するツールを開発しています。今後は、2015年1月に発生したイオ火山噴火前後でのプラズマ特性の時間変化や、プラズマがイオからエウロパへ輸送される過程を研究していきます。
木星氷衛星探査計画JUICEは、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)が開発した木星とその氷の衛星を探査する探査機で、2023年4月に打ち上げられました。主な目的は、太陽系最大の惑星が持つ大気、磁場、磁気圏と、木星の周りを回る衛星ガニメデ、カリスト、エウロパの内部構造や氷の地殻、地下の海の存在などを調査し、生命の存在可能性を探査します。
JUICEには10以上の科学観測機器が搭載されており、その中の電波・プラズマ波動観測装置「RPWI」の一部である高周波受信機(HF)は、東北大学が中心となって開発されました。
RPWIは、木星やその衛星周囲のプラズマ環境や電磁波を測定し、木星のオーロラ電波の構造、衛星の電離大気や地下の構造を調べます。JUICEは2030年代に木星圏に到達し、長期観測を行う予定です。 photo by JAXA
宇宙科学研究所JUICEプロジェクトページ
日本惑星科学会誌遊星人へのRPWI掲載記事 2025年
日本惑星科学会誌遊星人へのRPWI掲載記事 2016年 96ページ
LAPYUTAは、宇宙科学研究所・公募型小型計画のプリプロジェクト候補として検討を進めている紫外線宇宙望遠鏡計画です。宇宙の生命生存可能環境(目標1)と宇宙の構造と物質の起源の理解(目標2)を目指し、以下の4つの科学目標、(1)太陽系内天体の生命生存可能環境, (2)地球型系外惑星の大気,(3)近傍銀河の形成過程,及び(4)宇宙における重元素の起源、を掲げて検討を進めています。
これらの科学目標を達成するため、水素、酸素、炭素の輝線を含む110-190nmの真空紫外波長域で、高い空間解像度と波長分解能を持つ紫外線宇宙望遠鏡の開発を進めています。打ち上げ目標は2033年です。東北大は望遠鏡および観測装置の光学設計と科学検討の両面でこの計画を主導しています。