地球をテーマにした研究紹介
このページでは、本センターの地球に関する研究を紹介しています。
基礎情報:地球(ちきゅう、英: Earth)は、太陽系にある惑星の1つで、水星、金星に次いで太陽から3番目に近いため太陽系第3惑星です。月を衛星として持っており、表面に水、空気中に酸素を大量に蓄え、人類を含む多種多様な生命体が生存することを特徴とする惑星です。その内部は、大まかに地殻、マントル、核の3部分から成り、表面は、大気に覆われています。
地球大気の周りに広がっている宇宙空間「ジオスペース」には、地球大気や太陽風が起源のプラズマ(荷電粒子)が存在しています。このプラズマの中を伝わる電磁波を「プラズマ波動」と呼んでいます。
宇宙空間では粒子同士の衝突はほとんど起こりませんが、プラズマ波動と荷電粒子の「衝突」によって、粒子の運動が散乱されます。
散乱された高温の粒子が地球の大気に降り込むと、オーロラを光らせたり、高層大気の組成に影響を与えるので、プラズマ波動の発生や伝わり方を調べることは、宇宙空間と地球大気のつながりを解明する上で重要な研究です。
ジオスペース探査衛星「あらせ」によるプラズマの分布やプラズマ波動の観測、地上からのオーロラの観測などを使って、プラズマ波動がどのようにジオスペースを伝わり、高温の荷電粒子を散乱するのか調べ、宇宙空間が地球大気に及ぼす影響を研究しています。
「地球は大きな磁石」って聞いたことがありますか?その磁石が作る“磁気圏”は、私たちを太陽から吹きつける太陽風から守ってくれる、まるでシールドのような存在です。
私はこの磁気圏の中身、特にどんな種類のイオン(電気を帯びた粒子)が、どこに、どれくらい存在するのかを、電磁波“EMIC波”から読み解く研究をしています。現在は「あらせ衛星」のデータを使って、イオンの種類や割合を読み解くことに挑戦中です。
この研究は、2026年に水星へ到着予定の「BepiColombo」や、2031年から木星を周回する予定の「JUICE」など、他の惑星探査にも応用が期待されています。惑星の磁場やプラズマ環境を調べる新たな鍵として、この方法を確立することを目指しています。
「あらせ」は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した地球周辺の宇宙空間「ジオスペース」を探査する衛星です。2016年12月に打ち上げられ、地球の周りに高エネルギー粒子が存在する領域「放射線帯(バンアレン帯)」や放射線粒子の生成と消失に関与する電磁波、プラズマを観測しています。放射線帯は人工衛星をはじめとした宇宙空間での人類活動に悪影響を与える可能性があるため、「あらせ」は宇宙空間における高エネルギー粒子の生成過程を調べるとともに、宇宙環境を予測する宇宙天気研究を進めることも目的としています。
東北大学はプラズマ波動・電場観測器(PWE)の開発と、「あらせ」と連携してオーロラや電磁波を観測する地上観測ネットワークの構築に関わりました。クレジット:JAXA
FACTORSは地球の極域数千kmを2つの衛星で編隊飛行する計画です。
この領域の宇宙環境は、オーロラの微細で複雑な形状に表されるような領域間結合が多様な時間・空間スケールで発現し、宇宙空間物質の加速と輸送、それらに関わる波動の励起・伝搬、電場と電流構造が形成され、相互作用していることです。これらは、磁場を持つ惑星圏の形成や大気進化に関わる基本的かつ普遍的な機構と考えられます。
FACTORSには、磁場、電場、プラズマ粒子計測計等に加えて、PPARCが担当するオーロラカメラを搭載します。れいめい衛星やロケットに搭載したカメラの実績を生かし、従来の衛星観測よりも高感度・高空間分解能をもつ可視と紫外の2種類のカメラにより、オーロラの微細構造の観測が計画されています。
LAMP-2 ロケット計画による脈動オーロラと中層大気の観測
オーロラの種類の一つに「脈動オーロラ」と呼ばれる明滅するオーロラがあります。近年、「脈動オーロラ」が起きるときに「キラー電子」と呼ばれる、エネルギーが数百キロ電子ボルト以上の超高エネルギー電子も同時に降ってきている仮説が示されました。この「キラー電子」は、低い高度数十 kmの中層大気まで入り込み、その場所のオゾンを破壊する可能性があります。
私たちは、2015 年からアメリカの研究者と議論を重ね、LAMPロケット実験の提案をNASAに行い、採択されました。PPARCは搭載カメラ2台の開発を担当しました。ロケットは、アラスカ州のポーカーフラットから2022 年3 月 5 に、大きなオーロラ爆発の直後に発生した「脈動オーロラ」に突入して観測することに成功しました。この観測により世界で初めて「キラー電子」とオーロラ発光の一対一対応が明らかになりました。
この成果を受けて、現在私たちは次のLAMP-2ロケットの準備を進めています。LAMP-2ロケットでは、地上レーダーや光学観測との連携の強化が計画されています。
地上からの全天カメラによる多波長観測は、オーロラの形態などを知るために重要です。極地研究所は第X期重点研究(オーロラXプロジェクト:2022~27年度)を進めています。極冠地域では太陽風と大気の直接的な相互作用が起こり、数百eV(太陽風)からMeV(SEP)までの広範なエネルギー範囲で電子とイオンの降下が発生します。
私たちは、このプロジェクトのための全天カメラを開発しました。2023年から昭和基地で4台、2025年からオーストラリアのケーシー基地とディビス基地でそれぞれ2台、フランス・イタリアのデュモン・デュルヴィル基地とコンコルディア基地でそれぞれ2台の計10台の全天カメラ観測が開始されています。
さらに、2024年から北極ノルウェーで4台のカメラの観測が、福島・飯舘観測所でも低緯度オーロラのための全天カメラ観測が開始されました。これらの総合観測から、オーロラ現象の解明を進めています。
OCTAVES (Observation of CondiTion of Ionized Atmosphere by VLF Experiment)は、電離圏下部の電子密度変動を検出するVLF/LF電離層観測ネットワークです。現在、北欧2箇所、北米3箇所、日本国内2箇所、東南アジア3箇所の計10箇所で観測を実施しています。
低周波(LF)や超低周波(VLF)の電波は、地表と電離圏下端(約70-90km)の間を長距離伝搬します。電離圏下端の電子密度が変化すると受信信号の振幅や位相が変化するため、LF/VLF帯電波観測は地球の下部電離圏の電子密度変化を引き起こす現象を捉える「検出器」と見立てて、次のような科学的観測を行うことができます。 (1)放射線帯から地球大気への高エネルギー粒子の降下現象、(2)中層・上層大気への雷の影響、(3)地球大気への太陽X線フレアや太陽プロトン現象の影響、(4)日食や、下層大気から伝搬する大気重力波・音波の下部電離層への影響、(5)ガンマ線バーストの検出。
ネットワークや研究成果の詳細情報はこちら >> ( https://pparc.gp.tohoku.ac.jp/research/vlf/)