水星探査機BepiColombo MIO — 観測アンテナのLaunch-Lock解除(2019/8/6-7)

(文責:笠羽)

日欧合同水星探査 BepiColomboは、欧州宇宙機関 (ESA) の水星表面探査機 MPO (Mercury Planetary Orbiter) にJAXA担当の水星磁気圏探査機「みお (Mercury Magnetospheric Orbiter: MMO)」を載せ、水星へと向かいつつあります。2011-5年に先行周回した米Messenger探査機を継ぎ、この灼熱の惑星を史上初の「2機編隊探査」で観測予定です。
2018/10/20 日本時間11時前に打ち上げられたのち、探査機はノートラブルで太陽系空間を巡航中。太陽系の内側へ「落下」して水星に到達するには、地球フライバイ1回、金星フライバイ2回、水星フライバイ6回を経ての減速を要します。水星到着は2025年末。7年以上を費やす長旅となります。

私はみお君の観測装置取りまとめ役、観測装置統合制御装置「Mission Data Processor (MDP) 」の主担当と、日欧合同の電波/プラズマ波動/電場観測装置「Plasma Wave Investigation(PWI)」の主研究責任者を兼ねます。この8月にはこの両者をまたいだ「長期巡航への準備運用」をESA宇宙機運用センター(European Space Operation Center: ESOC)で行ってきました。ESOCは、ドイツ最大のハブ空港がある Frankfurt の近く、Darmstadtにあります。JAXA宇宙研(ISAS)・相模原側では、熊本准教授も立ち会いました。

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ESOC入り口正面の建物の壁には、パックマン・・・ではなく「パックマン太陽」と食われていく水星をはじめとする惑星たち・・・。Bepiくん目的地は、パックマンに最初に喰われる位置です。近所のDarmstadt駅にもパックマン壁絵がありますが、普通のドイツの人たちにわかるのでしょうか。うちの学生がわかるのかも怪しいですが。パックマンは日本発・1980生まれ(私は中学生だった)です。

8/2(金) — 重要運用その1「MDPのプログラム書換」。打上前になかった機能でも、必要になるものがちょくちょく出てきます。このため、書換作業は「計画のうち」ですが、MIOでの軌道上プログラム書換は初。担当の三菱重工の皆さんのご支援のもと、ISASの松田さん・高島さんとも十分に地上検証したうえで、慎重に慎重に手順を実施し、無事アップロード成功。週末+月には更新後の動作も確認でき、いざ準備完了。

8/6(火) — 重要運用その2「磁場観測用マスト(MAST)」のLaunch-Lock解除。MASTはこのページにある「蛇腹がついた2本対の伸展ブーム」で、長さ5-m。このフル伸展は、MIOのMPO探査機からの分離後、すなわち灼熱の水星環境で行われます。その前にできれば「Launch-Lock機構」を外しておくのがこの趣旨。
打上一月後の実施予定だったのですが探査機の温度が低く延期され、この改善を待っていました。結果は「スムーズに成功」!   担当の日本飛行機の皆さんもまずは一安心。でももう一つ残っています。

8/7(水) — 重要運用その3「電場観測用ワイヤアンテナ(Wire Probe Antenna: WPT) 」のLaunch-Lock解除。WPTはこのページにある「細いワイヤ4本・2対」のうち一対(もう片方はMEFISTO: スウェーデン+北欧組提供)。長さ15-mと長大です。これもフル伸展は灼熱環境で行われる予定。「Launch-Lock機構解除」は昨年11月に一度挑戦されたのですが、中途半端な解除状態となっていました。半年以上に渡る慎重な検討を経て、MDPに追加した新機能も使っての満を辞した再挑戦。ラッチ解除を示すステータスが「ぱたっ」「ぱたっ」と2つ確認でき、関係者全員の愁眉を開くことができました!
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待ちに待った巡航モード移行の成功で歓喜するESOC側(上)・ISAS側(下)の参加メンバー。ISAS・日本飛行機・NEC+東北大連合チームのお仕事でした。
最も歓喜に浸っているのはISAS側で指揮した小野さん・前田さん@日本飛行機。本当にお疲れさまでした。私もこのワイヤアンテナの設計検討がこのプロジェクトの初動活動の1つだったので、感無量です。最も恐い「灼熱環境下でのフル伸展」をあと6年強後に未だに控えてはいるわけですが、心置きなく巡航期間を満喫したいと思います。帰りにワイン二本を仕込みました。お盆明けに、日本飛行機へ持参させて頂く予定です。