日欧合同水星探査機 BepiColombo 打ち上げ迫る [現予定: 日本時間で2019/10/19昼]
日欧合同水星探査 Bepiくんは、欧州宇宙機関(ESA)の水星表面探査機MPO(Mercury Planetary Orbiter)にJAXA担当の水星磁気圏探査機「みお (Mercury Magnetospheric Orbiter: MMO)」の載せて水星まで向かう、という史上初の「2機編隊の惑星探査」です。先日お亡くなりになった米Messenger探査機を継いで、より内側には惑星が存在できしない灼熱の「水星」の総合観測を行います。
今のところ、南米のギアナスペースセンター(仏領ギアナ)から、来月10月19日(金)の日本時間11時頃に打ち上げが行われる予定です。探査機側は、(まだ)ノートラブルで準備が進んでいるとのこと。
この計画は、1990年代末に独立で行われていた日本側・欧州側の水星探査計画が融合して生まれたものです。宇宙科学における日欧の深い協力関係は、このミッションから本格的に始まりました。
私は、富山県立大から宇宙科学研究所(ISAS:JAXAへの統合以前)に移った直後、2000年頃の両者融合検討のスタート時から延々と関わってきました。ISASにいた頃は、みお君の「観測装置取りまとめ係」兼「観測装置統合制御装置 Mission Data Processor (MDP) 」の主担当として。東北大に移った2007年以降は、前者からは解放されましたが、後者は延々と。京大・生存圏研究所(私の出身研究室でもある)にこの探査機の「全観測装置シミュレーション環境」を置かせていただき、出張および仙台からのリモート試験でなんとかこなしてきました。
さらに、日欧合同の電波・プラズマ波動・電場観測装置「Plasma Wave Investigation(PWI)」チームの主責任者もやらないといけなくなりました。この取りまとめは当初、京大・生存圏の松本紘先生(私のD論の師匠)でしたが、2008年に総長になってしまわれたので・・・その後もいまだに理研の理事長ですし。
そもそも、水星到着はまだ遥か先の2025年(これもまだ「予定」)。重力が弱くまた太陽の近くを廻る水星には、地球(x1)、金星(x2)、水星(x6)のフライバイを使って燃料を節約しつつ速度を落とし、7年かけてようやくたどり着きます。当初、このミッション実現に日欧で大活躍された方々は、いずれもみなさん引退されつつある。我々の世代が今の主戦力、また2025年からのフル活動はさらに次の世代も担うことになります。単に距離だけの問題ではなく、「世代交代を含む長い旅」になる。
結果的に、PWIチームは、国内では後から開発が始まったがすでに飛翔するAraseくんの「Plasma Wave Experiment(PWE)」が先に子供として生まれ、また日欧で開発中の欧木星探査機JUICE (2022打上予定)の「Radio and Plasma Wave Investigation (RPWI)」が孫として育ちつつあります。前者で活躍しまた育つメンバーが、BepiくんそしてJUICEくんのコアになることになります。
欧州側のチームメンバーは、南米の打上射場に山ほど来るそうです(特にフランス:なにせ「パリから約5時間の国内旅行」)。
日本からは、私と、京大・生存圏研の小嶋浩嗣先生が、うちの装置チームの責任者として(双方とも、講義はちょっとサボらせていただき・・・)行くことになります。金沢大の笠原さん・八木谷さんなど他にもいろいろ関係者はおいでなのですが、黄熱病の予防注射も受けないといけないし、後期講義は始まっているし・・・でなかなか時間を作るのも大変。
まずは現地で、 “健やかに、元気に旅立つ” 姿を眺めてくる予定です。
MDP・PWIの電源が次に入るのは、無事生まれ宙に上がってからの、11月半ばです。
<LINKs>
BepiColombo missionの最新情報(JAXA)
日本が担当する水星磁気圏探査機「みお」の紹介(JAXA 宇宙科学研究所)
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(文責:笠羽)