PPARCセミナー(2024/05/13)

PPARCセミナー(2024/05/13)

(1)

[Name]

Ryota Kinoshita

[Title]

イオの観測に向けた近赤外高分散エシェル分光撮像装置ESPRITの開発

[Abstract]

 太陽系最大の巨大惑星木星では、イオ火山を起源とするプラズマは共回転型磁気圏で加速され、電離圏-熱圏結合を通じて極域オーロラ発光を引き起こす。そのため、木星オーロラとイオからのプラズマ供給、ならびに木星磁気圏でのプラズマ輸送との関係を知ることは、木星磁気圏変動現象の理解に本質的である。東北大学が開発中の近赤外分光撮像装置ESPRITはエシェル分光による高波長分解能を特徴としており、木星H3+オーロラの発光強度及びH3+イオン風の風速の導出を目標としている。これまでに、各機構系の常温及び真空冷却試験は完了しており、残る課題は検出器動作試験及び、校正用光源とスリットビューワーの設置である。検出器と駆動回路はTOPICSのものを流用できる設計となっているがこれらには、読み出しノイズが仕様値の17倍であるという問題があった。これに対する解決策として検出器から出た電圧をFETを経由させたのち読み出すというものがあり、今回それを実装した。今発表ではその結果について詳述する。

(2)

[Name]

Hikaru Suzuki

[Title]

南極昭和基地ミリ波分光放射計を用いた高エネルギー粒子降下による南極昭和基地上空での中間圏オゾン変動の解析

[Abstract]

 地球中層大気では、磁気嵐や太陽プロトンイベント(SPE)による数keV-MeVの高エネルギー粒子降下(EPP)の影響で窒素化合物(NOx)や水酸化化合物(HOx)が直接生成される。これらの物質の増加により、オゾン(O₃)が触媒作用で破壊され、大気の放射バランス・力学・大規模循環が乱される。また、これらの物質は極域の冬に極渦の下降によって下層大気に運ばれ、下部中間圏・成層圏オゾンの破壊にまで寄与してしまう可能性があり、地上の気候にも大きな影響を与える可能性がある。自身の研究では、南極昭和基地に設置されたミリ波分光放射計を使用し、磁気嵐やSPEが発生した際の中間圏O₃カラム量の変化を調べている。本セミナーでは、背景知識である中間圏で起きているNOx化学反応やO3光化学反応、解析方法(リドリーバルプログラム)の調整結果を紹介し、現在までの研究進捗を報告する。