女川観測所 1946-2020 (2020/6/22)

50年間以上継続的に地磁気観測を行ってきた女川観測所ですが、一部の棟の老朽化や観測装置の維持に支障をきたす状況となり、2020年度中に閉鎖する計画を進めています。
この準備作業の一環として、6月3日に女川地磁気観測所に行き、現地の方々へのご挨拶やいろいろな作業を行ってきました。

女川地磁気観測所の歴史は古く、1946年に小乗浜に女川町も援助して女川地磁気所が建てられ、東北大学の地磁気観測が開始しました。 1957年の国際地球観測年には、世界の地磁気脈動パイロット観測所に指定され、以来この分野で国際的に主導的な観測を続けました。 一方、小乗も急速に都市化し、人工擾乱のために精密な地磁気観測が危ぶまれてきました。このような状況の中で1960年にチリ地震津波が女川町を襲い、観測室と磁力計が破壊されました。そこで、この年から翌年にかけて、現在の桐ヶ崎に観測所を移転しました。4万3000m2ほどの敷地内に、本館、磁力計室、検流計室などが配置されました。この後の女川地磁気観測所の誘導磁力計の研究から、地磁気脈動が明らかにされました。ここで命名されたPc、Piという現象は、国際研究機関(IAGA)で認定され、現在世界中の研究者で広く使われる用語となっています。
その後1990年からの国際協同研究計画「STEP」での観測や、名古屋大学、九州大学、北海道大学、スタンフォード大学、東北工業大学など、国内外の大学との共同研究の拠点として活躍しました。また、ロケットや人工衛星「あけぼの」・惑星探査機「さきがけ」に搭載する磁力計や、南極無人観測網「AGO」の開発に利用されました。1999年に東北大学の改組統合により惑星圏女川観測所と改称され、2000年には本館が新築されました。また、インターネットが開通し、仙台より全自動観測が可能となり、ホームページでも磁力計のデータが見られるようになりました。2011年の震災では磁力計が倒壊し、一部の観測ができなくなっています。
2019年度までに行ってきた観測は、蔵王観測所への移転(九州大学)などを含めて再展開を終えました。長い活動を終えつつある女川観測所ですので、丁寧に閉所作業を進めたいと考えております。(文責:坂野井)