欧 木星・氷衛星探査機 JUICE — 月・地球フライバイへ (日本時間 2024/8/20朝 & 21朝)
欧州宇宙機関(ESA)の木星・氷衛星探査機JUICE。我々が参加する BepiColombo 日欧共同水星探査機に続く 「L-Class」、ESA最大級のミッションです。
2031年に木星系に到着し、2034年にガニメデを巡る初の氷衛星周回探査が予定されます。
東北大は、電波・プラズマ波動観測器 RPWI (Radio and Plasma Wave Instruments) の高周波受信機を提供しています。
◉ ESA: Project web / Twitter
◉ JAXA: Project web / Twitter
JUICEは2023年4月の打ち上げ後、地球とほぼ並走する軌道をえがいて来ましたが、この夏、最初の「天体接近」として、月と地球へ戻ってきます。
2024/8/20火の早朝に月、2024/8/21水の早朝に地球のすぐそばを通過し、金星との会合へ向かいます。
◉ ESAの解説webページ & 解説資料
◉ 月への最接近: 8/19月 21:16UT。日本時間では 8/20火 6:16JST
◉ 地球への最接近: 8/20火 21:57UT。日本時間では 8/21水 6:57JST
「分厚い大気を持たない天体」への最接近の「次」は2030年代、「木星氷衛星群へのflyby」です。
この月・地球フライバイは、この模擬試験の最初で最後の機会です。
軌道制御が優先のため限られた観測・試験ですが、「絶対に必要!」と力説して我々が実施する内容は以下になります。
(1) 月flyby時
今回、JUICEは地球の真夜中側から接近し、月flybyに伴って「地球が月に隠され」ます、
将来の木星周回時には、氷衛星が木星の強力な電波源を隠すタイミングで、電波吸収を使って衛星電離大気を表面近傍から高高度まで観測する予定です。
地球も、木星より弱い&周波数が低いながら「オーロラキロメータ波」と呼ばれる強力な電波を北極・南極の上空数千kmで放っています。月フライバイは、木星&氷衛星ペアの「電波掩蔽観測」を「地球&月ペア」で試す絶好の機会となります。
なお、地球のオーロラ電波の周波数は、関東圏のNHK AMラジオ(NHK第一:〜600kHz帯、NHK第2:〜700kHz)のあたりです。
(2) 月最接近時
JUICEにはレーダー装置RIME(9MHz)が搭載されています。最接近時には、この送信で我々の観測は阻害されるのですが、レーダー波はパルス的なので間の時間帯でなんとか観測できそう。また、最接近からしばらくしてRIMEの送信は止まります。このため、以下を試す予定です。
a. RIMEの月面反射波を一緒に受ける。確認ポイントは「RIMEといっしょに受けて比較を行う」になります。
b. RIME停止後、地球のオーロラキロメータ波とその反射波を狙う。
(3) 地球最接近時
アラスカに電離圏探査用の「HAARPレーダー」があります。この電波をJUICEへ向けて送信してもらい、RIMEと共に受信して強度&方向探知の検証を行います。
日本のArase衛星に載せている我々の装置PWEで、昨年末から予備試験を施してきました。
(4) 地球最接近後
探査機をぐるぐる回しながら地球のオーロラ電波を連続観測し、電波源方向が識別できるか検証します。
これができると、木星や氷衛星近傍の 「どこに電波源があるか」「どう屈折・反射して届くか」を決められるようになります。
「氷衛星 & 木星で行う観測」の事前検証を行う貴重な機会ですし、またボーナス的になにか出ることも期待しています。お楽しみに。
なお、地球からのオーロラ電波やHAARPレーダー電波は、10 MHzまでですが、JAXA あらせ衛星も観測可能です。こちらの同時観測プランも入力中です。
(文責:笠羽)