飯舘大型電波望遠鏡(IPRT)の旋回部車輪系修理

2018年3月初旬、それまで太陽や惑星、また、パルサー天体等から到来する電波を順調に日々観測し続けてきた飯舘観測所にある大型電波望遠鏡IPRT(写真1)が、突如運転を停止しました。

写真1. 飯舘大型電波望遠鏡(IPRT)

IPRTは方位角方向、高度方向に自在に動かすことが出来ますが、方位角方向の動きが異様に重くなり、過負荷エラーで停止していたのです。考えられる原因として、駆動ドライブ用のチェーンが脱落し、何かに引っかかった場合(自力で復旧出来る、軽微な類の不具合)や、駆動モーター・ブレーキ系の不具合(業者委託が必要な場合もあり、修理時間&ややモノ入りな不具合)等々がありますが、前者の類いであることを祈りつつ現場に急行しました。しかし、調査の結果は何れでもなく、より面倒&モノ入りな不具合、即ち、自重約300トンのアンテナ本体のジャッキアップを含む大部の作業が必要となる、旋回部車輪 全12系の一つのベアリング損傷であることが分かりました。その後、他の車輪は今後も大丈夫なのか?、再発可能性を極力下げるための対策・方法は?、等々について業者を交えた長い検討を行い、初秋に漸く修理着工にこぎ着けました。修理作業では、アンテナ本体のジャッキアップ作業と、不具合の発症した系以外も含む複数系の改修を行うこととなった自重約1トンの車輪筐体の取付・取外作業は全て「人力」 という厳しい作業を、請負業者は入念な準備と見事なチームワークで対応下さり(写真2)、機械整備工場での損傷部分を含む車輪回転系の高耐久部品への総入替も無事終了し(写真3)、12月初旬にほぼ9ヶ月ぶりにIPRTは復旧しました。今は、本改修により、IPRTの運用が末永く無事継続することを念じつつ、観測を再開したところです。

[謝辞] 本修理に尽力下さった全ての皆様、特に (株)IHIインフラ建設関係者の皆様に 厚く御礼申し上げます。

(文責:三澤)

写真2. 部品交換修理の終わった駆動系車輪筐体(自重約1トン)の搬入作業。

写真3. 機械整備工場で部品交換後の駆動系車輪の確認を行う土屋さん(写真中央)。