2019年3月25日

プラハ出張:日本-チェコ二国間共同研究

2019年3月19~21日にチェコのプラハで、プラズマ波動や地球雷観測を専門とする日本とチェコの研究グループで、研究交流会が行われました。

この研究プログラムは、名古屋大学宇宙地球環境研究所の三好由純教授(PPARCのOB)とチェコ科学アカデミー大気物理学研究所のOngrej Santolik教授を代表として、最新の科学衛星や地上観測のプラズマ波動観測データを共同で解析し、地球近傍の宇宙環境を理解することを目的としています。

東北大からは、笠羽先生、土屋先生、吹澤君、平井(PPARC)、加藤先生(電磁気)が参加しました。
1日目と3日目は、研究所でそれぞれ事前に提案された議論したいトピックについて自由なディスカッションが行われました。2日目はプラハ旧市街地にてシンポジウムが開かれました。

日本チームからは主に、2016年12月に打ち上げられたあらせ衛星で得られた観測データに基づく議論がなされました。3日間という短い期間でしたが、充実した研究交流会でした。

チェコはビールが有名です。ビールも音楽も最高でした...!!

(文責・平井、写真・吹澤)

プラハ城からの眺め。とってもきれいでした!

2日目の夕食会場にて。PPARCのOBと現学生で記念撮影(左から、栗田さん、吹澤くん、土屋先生、平井、三好先生)

2日目のシンポジウム会場。こんなところで研究発表するんですか...!?というほど綺麗で歴史を感じる建物でした。

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2019年3月18日

2018年度ハワイ研修に行ってきました

東北大学環境・地球科学国際共同大学院プログラムによるサポートのもと、地球物理学・地学専攻の学部2年生から博士後期課程の学生を対象にハワイ研修が行われました。「地球を丸ごと理解する」グローバルな視野を持った大学院生の育成を目指すために設けられたこのハワイ研修は、今回で2回目となります。8泊10日間でハワイ島・マウイ島・オアフ島をまわり、火山巡検や本学の観測所見学、ハワイ大学のセミナー参加など、研修の内容は盛り沢山でした。その中でも、特に印象に残った体験についてご報告したいと思います。

ハワイ研修3日目 ハワイ島でのキラウエア火山巡検

火山活動による地割れや溶岩なども目で見て手で触れることができました。

溶岩とは思えないほど綺麗でしたが、国立公園の岩石などを持ち帰ることは禁止されています。噴火やそれに伴う地震といった大規模な自然災害は普段なじみもなく、どこか別世界の話のような気持ちでいましたが、その痕跡を目の当たりにして地球科学を学ぶ必要性を強く認識しました。また、広大な火山地形やその奥に広がるハワイ諸島の景色に圧倒され、地球というものの大きさを身に染みて実感しました。

ハワイ研修4日目 マウイ島でのハレアカラ天文台見学

東北大学ハレアカラ観測所のT60を実際に見ることができました!

私は昨年3月に行ったPPARC実験でT60を使用したのですが、仙台からリモートで操作したので実物を見たことがなく、1年越しにやっとご対面できました。今年のウィンターストームの影響で残念ながら中に入ることはできませんでしたが、その代わりハワイ大学の望遠鏡を見学させていただきました。観測所のロゴには絶滅危惧種のネネが描かれており、ハワイならではという感じがしました。(私自身、ハワイ滞在中にネネに遭遇することができました。ラッキー!)

ハワイ研修5日目 マウイ島でのハレアカラトレッキング

火星に似ていると言われているハレアカラからの眺め。

砂漠のような不毛の惑星である火星にも大昔には水が豊富に存在したと言われていて、私は火星周回衛星に搭載されているレーダーサウンダーを使って現在の火星に地下氷や地下水がないかどうかを調査する研究をしています。そのような背景もあり、このトレッキングがとても楽しみでたまりませんでした。当日は運のいい事に快晴でハレアカラクレーターを一望することができました。3000m級の山に登ったのは初めてで、少し下ってまた山頂に戻るだけで息があがってしまいましたが、この絶景だけは忘れるまいとカメラをずっと構えて歩いていました。ここが火星だったら、などと色々想像を膨らませるとインスピレーションが湧いてきてとても刺激的な時間を過ごすことができました。

 

10日間は長いようであっという間でした。世界をリードする海外協定大学の教員による講義を受講したり、地球規模の自然現象が発生して調査・観測が行われている実際の現場を訪問したり、様々な体験をすることができました。私は地学の知識が乏しかったのですが、現地での地学教員の丁寧な説明やフィールドワークにより地学の理解も進みました。今後、地球物理と地学の新たな分野融合も期待できそうです。(文責 大浦)

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2019年3月 5日

「惑星圏研究会」が今年度も開催されました(第20回!)。

  2019年2月18日~21日の4日間に渡り、東北大学大学院理学研究科 青葉サイエンスホール他で「惑星圏研究会」が開催されました。3年前の2016年にも本研究会開催の様子を本ブログで紹介しましたが、2000年に初めて開催され、年1回ペースで私共 太陽惑星空間系領域が主催してきた本研究会は、今回で20回目を迎えました(本圏研究会については研究会HP: http://pparc.tohoku.ac.jp/sympo/sps/ もご参照下さい。)。今回は、国際シンポジウムとして開催された2011年を除くと、初めての4日間開催となり(従来は2~3日間)、日本他計7ヵ国からの参加者は120余名、講演件数も101件(口頭講演:72 件、ポスター講演:29件)を数え、これらは何れも過去最多でした。

 今回の研究会は、最初の3日間は、主に、現在進行しつつある探査・観測・理論的アプローチに基づく惑星等の研究について国際セッションとして開催され、「巨大ガス惑星・氷衛星系」、「水星・小型天体」、「比較惑星学」、「系外惑星」のテーマで、英語による講演と議論が行われました。2日目の夕刻には「将来計画」セッションも開催され、惑星探査や科学衛星観測の将来計画に関わる国内外の研究者からの最新情報の紹介とともに、議論が行われました。一方、4日目は、近年、地球外生命の探査で特に関心が高い、水を持つ・持っていた惑星や天体をテーマとして、最新の研究内容の講演と深い議論が日本語で行われました。研究会では、以上に加え、例年同様に、博士課程進学予定者や博士号を取得したばかりの大学院生、若手研究者によるセッションも2日目以降に毎日開催されました。また、1日目夕刻と3日目昼時にコアタイムが設けられたポスターセッションでも、予定されていた時間を超えて白熱した議論が展開されました。

 研究会は、夕闇が深まる2月21日18時に、笠羽大会委員長による総括と次年度に向けた研究会の進め方についての宿題が提示され、閉会しました。末筆ながら、研究会にご出席頂き、講演・議論で研究会を創り上げて頂いた参加者の皆様、会の企画・方向性の決定にご尽力頂いたSOCメンバーの皆様、会成立に多大なご協力を頂いた各研究プロジェクトや大学・研究機関各位に、改めて篤く御礼を申し上げます。

(文責:三澤(惑星圏研究会LOCメンバー))

図1.研究会3日目午前の比較惑星学セッションの一コマ。Goodman先生ご講演時の質疑・応答の様子。

図2.研究会初日夕刻のポスター講演コアタイムの一コマ。

図3.研究会初日夕刻に開催されたバンケット から2コマ。主賓挨拶をされるDelcourt先生。

 

図4.研究会開催前日に企画されたエクスカーションの一コマ(瑞巌寺@松島)

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2019年2月20日

プリューム!

2019/2/11-15の日程で、世界各国から40-50名の研究者がアイスランドに集まり、外惑星の月に関するワークショップが開かれました。今なぜ外惑星の月か、というと、土星探査機カッシーニが土星の月エンセラダスから水が噴き出していることを発見し、ハッブル宇宙望遠鏡が木星の衛星エウロパの表面に水の間欠泉(プリューム)がある証拠を突き止めたからです。エンセラダスもエウロパも、表面は氷の殻に覆われていますが、その下には液体の水が存在していて、火星と並び、生命の居住環境の研究を行う絶好の研究対象になった、というわけです。木星の別の衛星、ガニメデとカリストにも氷殻の下に液体の水が存在する可能性があります。今回のワークショップに集まった研究者は、地質学者ではなく、惑星の大気・磁場やその周りのプラズマを扱う宇宙物理学者でしたが、磁場やプラズマの観測が、衛星の内部の構造、衛星の大気、プリュームの観測にとても重要だということが話し合われました。


写真は、火山島でもあるアイスランドで有名な間欠泉。これがあるからワークショップの場所がアイスランドになりました(主催者談。あとは、アメリカとヨーロッパ両方から近いから。日本からはどのみち遠い。。。)。それから、アイスランドはオーロラ帯なので、オーロラを見るのにも絶好の場所です。ワークショップの期間中、1日だけ夜空が晴れて明るいオーロラが見えた日がありました。が、私はミーティングディナーのお酒と時差ボケのせいで、オーロラに気づかず就寝。。。
2020年代後半には、エウロパとガニメデには、2機の探査機が送り込まれます。ガニメデの周回軌道に探査機を送り込むヨーロッパのJUICE計画には、日本からも4つの観測機器が参加します。東北大学は電波の受信機を開発中。電波を使って、衛星の大気や地下構造の観測に挑みます。今年は遂にフライトモデルの製造です(日本側開発責任者は、笠羽大先生)!

地球には月は一つしかありませんが、木星や土星には非常にたくさんの月があります。木星には、ガリレオ・ガリレイが最初に発見した大きい月だけで4個。前述のエウロパ、ガニメデ、カリストは"氷衛星"ですが、イオには、地球にもあるような溶岩を噴出する活発な火山がたくさんあります。宇宙は多様ですね。私は日本の宇宙望遠鏡衛星「ひさき」により観測されたイオの火山ガスの研究成果を発表してきました。

(土屋)

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2019年2月 5日

ローマ出張:欧火星探査機ExoMars Trace Gas Orbiterの NOMAD チーム会合 (文責:笠羽)

2018年春から本格観測に入った欧火星探査機ExoMars Trace Gas Orbiter。
火星大気の組成を過去最高の精度で調査し、大気活動の全貌と地殻活動(や生命活動?)の痕跡を大気化学の面から掌握することを目指す、野心的な探査機です。2020年に打ち上げられる着陸機とペアで、火星における欧の「Astrobilogy」的研究の柱として位置づけられています。
(Missionの紹介 @ ESA:
http://exploration.esa.int/mars/46048-programme-overview/ )

この探査機の主力機器の1つ「NOMAD」(赤外線・紫外線分光器)は、ベルギー
を中核として開発されました。うちの出身である青木君が、ベルギー・IASB側の
コアメンバーの一人としても活躍中です。
(装置の紹介 @ IASB: http://mars.aeronomie.be/en/exomars/nomad.htm) 
日Nozomi - 欧Mars Expressの関係から始まったこれまでの共同研究の履歴から
私も共同研究者の一人となっており、2017-8年度には日本-ベルギー共同研究
「火星-金星大気研究」を実施してきました。
この総まとめの1つを兼ね、1/26-28にローマ郊外のイタリア宇宙機関 ASI
(Agenzia Spaziale Italiana) で開かれた「NOMAD チーム会合」に、NICTの黒田
さんと共に参加してきました。
(会合のlink: https://t.co/3nP67OT2l4 --- イタリア語です。)

Fig1.jpg
この写真の数km先に、Appia Antica、すなわり、いにしえのローマ街道がありま
す。すぐに野山がジャングルと化す日本から来ると、一見「放っておかれた造成
地」にしか見えない。少なくとも、この10年ぐらい同じ風景に見えます。
なのでその200倍ぐらいはここまんまでもいられたのかも。流石に、木は切られ
たのだろうが。。。

FIG2.jpg
この180度後ろに、「イタリア宇宙機関」ASIがあります。冬のイタリアは天
気悪く、この写真を撮った最終日だけ晴れました。ここは第2ローマ大学?の端
にあたります。

FIG3.jpg
この会合は「ExoMars周回機の1搭載機器」のものなのですが、それでこの人数
が参集しています。加えてTV会議参加の人もおりました。
青木君は元気に「火星の水と重水素/水素比」、特に昨年夏に起きた火星ダスト
ストーム時におけるこの大変動の紹介を行っていました。
こちらも、うちのハレアカラ60cm望遠鏡で捉えたより高高度のCO2発光量の増大
(惑星大気の中川さん成果)、また過去火星の大気環境再現を含むモデル研究の
現状の紹介を行ってきました。

帰途のアリタリア機内で、ASI宣伝ムービーが結構見られることに気が付きまし
た。Mars Express やExoMars、すなわちこの会合の主役のみなさんも登場。

なお、まだ確定ではありませんが、2020春、桜の季節に、この会合を仙台で開く
かもしれません。

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2019年1月29日

ノルウェー出張・観測ロケット打ち上げ報告

つい先日の記事で述べました、ロケット実験RockSat-XN打ち上げが終了し、先日ノルウェーから帰って参りました。

ロケット打ち上げ候補日は2019年1月10日から14日の5日間で、
時間帯は現地時間の朝8時から昼の12時まででした。

打ち上げ候補日当日は、緊張とともに朝早くに目覚め、
ロケット打ち上げに重要なその日の天気とサイエンスのコンディションを、
コーヒーを片手にロケット発射場のラウンジで研究チームのメンバーと共に見守りました。

10、11、12日は強風により打ち上げが延期され、
もやもやとした気持ちが募っていました。

そして13日の朝、予報では朝から昼にかけての天候の回復が見込まれており、より一層緊張した空気がラウンジを包み込んでいました。

ロケットは、地上の風もさることながら上空の風からも大きな影響を受けるため、
気球を飛ばして上空の風速を計測することで、打ち上げの可否を判断します。

何度目かの放球の後、打ち上げ条件を満たす天気のコンディションがNASAのエンジニアによって確認されました。
その間、我々PARMチームではノルウェーのトロムソにあるEISCATレーダーにより電離圏の電子密度上昇から大気への電子降下を確認していたため、このタイミングで我々もGOサインを出し、打ち上げへのカウントダウンがスタートしました。

そして、空が青く明るくなり始めた現地時間午前10時頃、
RockSat-XN実験に関わる様々な研究機関のメンバーが見守る中、
我々の観測機器を載せたロケットが打ち上がりました。

ロケット打ち上げの動画

ロケットは無事に打ち上がり、予定通りの軌道を描きながら地上にデータを届けました。

データの初期解析の結果から、PARMチームの観測機器がフライト中に無事動作していたことが確認されています。

今後はより一層詳しいデータ解析を進めて行き、結果を学会等で報告していく予定です。

(文責:八木、吹澤)

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2019年1月10日

ノルウェー出張・観測ロケット打ち上げ前日

脈動オーロラの直接観測を目的とした、アメリカとノルウェーが主催するロケット実験RockSat-XNの打ち上げのためにノルウェーのアンドーヤに来ています。

我々PPARCは、坂野井先生主導のもと、オーロラ撮像カメラ (AIC)を開発しロケットに搭載しました。AIC以外にも、電子観測器 (MED, HEP)、磁力計(AFG)を日本チームが開発・搭載し、これらをまとめてPARM(Pulsating AuroRa and Microbursts)と名付けました。

各観測機器の最終的な動作チェックは無事終了し、あとは打ち上げを待つのみです。
"

AICの写真。(上) 性能試験のため、レンズの前面にNDフィルターを装着中。(下) 試験終了後、打ち上げ準備万端のAIC。

日が昇らない1月のアンドーヤですが、暗闇をナトリウムランプが優しく灯しています。街の人々の生活はとても穏やかです。

街中の写真。現地時間15時で既に真っ暗です。

時間に余裕がある朝はワッフルを自分たちで焼いて食べました。

ハート形のワッフルの写真。

街は海と山に囲まれています。風が強く、雲が空を覆っている時間が長いですが、良い天候と良い脈動オーロラの発生を祈っています。

ロケット発射場の周辺の景色。

ノルウェー滞在6日目の夜に現れたオーロラの写真。

(文責:八木、吹澤)

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2019年1月 7日

MOOC(解明:オーロラの謎)英語版進行中

MOOC(Massive Open Online Course:大規模公開オンライン講座)は、世界中に登録者を持つ、新しいオンライン学習サービスです。東北大学は、2016年からMOOCに参加して、日本語版のコンテンツを提供しています。

昨年の暮れの押し迫った頃、これまで日本語で配信していた番組を英語に吹き替えました。場所は仙台駅前のNHK関連会社の録音スタジオ。早朝から夕刻まで、まる2日間かけて、収録しました。

今回提供するテーマは、「オーロラ」です。寒い地域の夜を飾るオーロラですが、地球以外の惑星(木星、土星など)にも、出現します。番組では、オーロラ発生の仕組みについて解説するとともに、 PPARCで進めている望遠鏡プロジェクト、JAXAの衛星プロジェクトに参加して得られた成果、そして世界の関係研究機関との共同研究から得られた知見を紹介しています。

全部で4時間以上にわたる配信内容ですが、現在、NHKエデュケーショナルにて、編集作業が続けられていて、来年度、世界に発信される予定です。

日本語版は、6200人の皆様に視聴していただきました。多くのご質問を頂き、PPARCの大学院生3名(近藤さん、荒川君、吹澤君)の協力を得て、回答しました。 今度は世界に向けての配信です。世界からは一桁多いご質問が予想されますので、事前の備えを行おうと思っているところです。(小原隆博)

[日本語版MOOC配信の様子]

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