2015年6月26日

ハレアカラ観測所より

みなさん、アロハ―!6月21日から7月3日まで、T60望遠鏡への分光器の設置、調整、試験観測等のため、ハワイ・マウイ島ハレアカラ観測所に来ています!メンバーは、助教の鍵谷先生、そして我々、分光部門修士課程1年 小野紘夢、宍戸美日の3人です。

blog1s.jpg

東北大学60cm 望遠鏡のあるハワイ・ハレアカラ観測所は、標高約3000m、0.7気圧と若干過酷な環境にあり、昨日の作業中私は急な頭痛に見舞われてしまいました...。
今回は、仙台で作った分光器をハワイに持ち込み、山頂まで運搬、取り付けを行っています。3人合わせてとても大きなキャリーバッグ6つと大変な大荷物で乗り込んでいます。今日はハワイ4日目、初日は移動日で、2日目から4日目にかけて分光器の設置を行いました。明日以降は、土星と木星の試験観測の予定です。何が見えてくるのか、とても楽しみです!

ところで、何故ハワイに世界中の天体望遠鏡が結集しているかご存知ですか?実は、ハワイは、世界で一番天体観測に適した土地のひとつであると言われています。例えば、みなさんご存知のすばる望遠鏡も、ハワイの、我々の望遠鏡のあるマウイ島の隣の島、ハワイ島のマウナケア山頂にあります。そんなハワイの観測所から見上げる夜空の美しさたるや、とても言葉では言い表すことができません。

blog3s.jpg

さて、今回我々3人が滞在しているのは、ハワイ大学天文学研究所のゲストハウスです。食事は自炊です。空き時間に近くのスーパーに買い出しに行き、毎日頑張ってご飯を作っています。昨日の夕飯はハンバーグでした。マウイの物価は日本よりもずっと高く、例えば卵は12個入りで5,6ドル、日本円にしておよそ600円から700円ほどするのです!ですが牛肉はとても安いです。さすがアメリカといったところでしょうか。

お伝えしたいことはまだまだたくさんあるのですが、そろそろハワイは寝る時間なので、このあたりで失礼します。みなさん、マハロー!

文責 修士課程1年 小野紘夢 宍戸美日

[BACK TO TOP]

2015年6月17日

Magnetospheres of Outer Planets 2015

5月31日~6月5日に、アメリカ・アトランタのジョージア工科大学で開催された、「Magnetospheres of outer planets 2015」という学会に参加してきました。通称MOP(モップ)と呼ばれるこの学会は主に木星・土星・天王星及びそれらの衛星にフォーカスした学会で、隔年で開催されます。

 

発表では、木星・土星の磁気圏電離圏に関する研究や、イオ・エウロパ・ガニメデ・タイタン・エンケラドスといった衛星の研究などが紹介され、活発な議論がなされていました。日本のグループからは、主にSPRINT-A/HISAKIの紫外分光器を用いた木星観測の結果が紹介され( )、大いに盛り上がりました。口頭発表が約80件、ポスター発表が約100件あり、これまでで最多だったようです。MOP2015_Photo.jpg(full size)

次回は2017年にスウェーデン・ウプサラで開催されます。写真は「Passing the mopセレモニー」で撮ったもので、開催国にはMOPの象徴である「モップ」が渡されました。2017年は木星探査機ジュノーや土星探査機カッシーニの最新の観測結果だけでなく、地上望遠鏡とのコラボレーションに関する発表で、これまで以上に盛り上がることが期待されます。mop.jpg

(北 元)

[BACK TO TOP]

2015年6月11日

アルマイト加工中

alumite.png

今、ハワイ・ハレアカラ観測所の望遠鏡に取り付ける可視分光器の部品の製作に追われています。出発まであと1週間ですが、まだ部品の製作が終わりません。今は、アルミニウム部品の加工と、部品を黒くするために、表面に黒色アルマイト加工を施す作業を並行して行っています。アルマイト加工は、化学実験にも似た趣がありますが、楽しんでいる余裕がありません。(鍵谷将人)

[BACK TO TOP]

2015年5月19日

木星の高エネルギー粒子を電波望遠鏡で探る

iprt_winter2015.JPG

飯舘観測所(福島県相馬郡飯舘村)で稼働している飯舘惑星電波望遠鏡(通称:IPRT)は、その名の通り惑星から地球に届く電波を観測する望遠鏡として建設されました。電波は目に見えないので存在を実感しづらいものですが、一方、テレビや携帯電話など、情報のやり取りに使われているおなじみのものでもあります。夜空に光る惑星、星、銀河からは目に見える光だけなく電波も出ていて、その電波はいつも地球に届いています。ただし、その電波の強さはテレビや携帯電話の電波に比べると桁違いに弱く、これだけの面積(1023平方メートル)で電波を集めてようやく観測ができるようになります。

電波で惑星などの星々を観測することは、光の観測と何が違うのでしょう?

例えば、下の図を見てください。これは電波で撮影した木星の画像に、目で見える木星の写真を重ねたものです(明るいところほど電波が強い)。木星の周りの宇宙空間に電波の強い場所がある事が分かります。

jupiter.jpg

木星の磁場に非常にエネルギーの高い粒子が閉じ込められた、放射線帯と呼ばれる場所があり、そこからシンクロトロン放射と呼ばれるメカニズムで電子が電波を放射していて、これが木星の周りで光っている電波の正体です。このように、電波を使うと、宇宙空間の高エネルギー電子を調べることができます。

放射線帯は、光に近い速さにまで加速された高エネルギー粒子(放射線)が存在している領域であることからこの名がついていて、太陽系の惑星を調べる限り、自分自身で強い磁場を持つ惑星(地球、木星、土星など)の周りには必ず存在しています。

さて、木星のシンクロトロン放射を電波望遠鏡で観測すると、地上にいながらにして木星の放射線帯を調べることができます。電波の強さと広がりから、木星には、地球の放射線帯と比べて大きさが10倍、高エネルギー電子の量も10倍、エネルギーも10倍、というとてつもない放射線帯があることが分かります。

地球の場合、太陽から太陽風によってエネルギーが運ばれてきて、外側から放射線帯に影響を及ぼすのですが、飯舘惑星電波望遠鏡で木星の放射線帯から放射される電波の強さを調べてみると、太陽の紫外線が増えた時に、放射線帯が変動することが分かりました。どうやら木星では、先ず、太陽の紫外線が惑星の超高層大気を加熱して、これが内側から放射線帯に影響を及ぼしているようです。

磁場を持つ惑星はその周りに放射線帯を持ちますが、その性質は惑星によって異なるこということです。私たちは、地球に比べて木星は磁場が強く自転が速いことが、この違いを生みだしていると考えています。このように、地球と他の惑星の違いを調べることは、私たちの活動の場である地球とその周辺の宇宙環境が現在の姿となっている条件を理解する助けになります。

飯舘惑星電波望遠鏡は、私たちが自らのアイディアで観測装置を改良でき、自由に観測したい天体に向けることができる専用望遠鏡です。現在もこの機動力を生かして、木星の他、太陽やパルサーなどの天体の電波を日々観測しています。

地球の周りの宇宙空間では、太陽で爆発現象が起こった後に宇宙嵐が発生しますが、この時、地球の放射線帯では高エネルギー粒子が急に増えて人工衛星に障害を与えることがあります。このため、宇宙嵐の発生と高エネルギー粒子の加速メカニズムを調べる研究は、現在、世界中で盛んにおこなわれていています。日本でも放射線帯を詳しく調べる科学衛星の打ち上げが予定されていて(ジオスペース探査衛星)、東北大学も観測装置の開発に参加しています。

(土屋史紀)

[BACK TO TOP]

2015年5月 5日

飯舘観測所の現況


 東北大学では1991年に、阿武隈山系の高原にある福島県相馬郡飯舘村の山中に新しい観測所を開き、木星や銀河起源の10m波帯電波の観測を開始しました。1999年には60cm口径の光学望遠鏡を、2001年には国内屈指の1000平米の開口を持つ大型電波望遠鏡を設置し、惑星観測を行ってきました。また、2010年秋には新しい装置を開発し、太陽電波の連続観測を開始しました。

 この新しい観測を始めた矢先の2011年3月、東北地方太平洋沖地震が発生し、飯舘村も震度6を記録しました。観測所も10m波帯電波観測用アンテナの一部が損傷する被害が生じましたが、大型装置群は幸い無事でした。観測所の大型電波観測装置は、遠隔運用により、地震発生後約2ヶ月で観測を再開しました。また、損傷したアンテナも2012年末迄に修復され、観測に復帰しました。一方、光学望遠鏡はハワイ・マウイ島の標高3000mを超えるハレアカラ山に移設され、2014年秋に惑星観測を再スタートしています。

 2011年3月の大地震に伴い、ご存じのように、福島第一原発事故が発生しました。この事故により飛散した放射性物質は、原発の北西約30~40kmにある飯舘村にも降下し、村は計画的避難区域に設定されました。2012年7月には、観測所のある、村の北西部の前田地区は居住制限区域に設定され、それ以来、出入りに制限はないものの泊ることは原則として出来ない地域になりました。現在、村では平成28年内の完了を目処に環境省主導による除染作業が進められており、宅地に続いて農地・森林・道路の除染作業が3000人規模で行われています。国有林内にある観測所も、本年内の除染実施が計画されています。

 飯舘村は豊かな自然に恵まれ、また、心のこもった暖かで繊細な「までい」な繋がりをを大切にしてこられた村です。震災前には観測所でも、村の皆さんとその美しい星空を愛でる会を村と共同で開催してきました。村の皆さんの安心しての帰還が早期に実現し、また、観測所で皆さんと笑顔で再会出来る日を私達も心待ちにしています。

(三澤浩昭)

Iitate_maeda20150430.jpg

図.除染作業が進む福島県相馬郡飯舘村前田地区(2015年4月30日撮影)

[BACK TO TOP]

2015年4月20日

国連・宇宙天気ワークショップを協賛

 

惑星プラズマ・大気研究センターに異動する前は、JAXA筑波宇宙センターで、宇宙環境の観測を行っていました。人工衛星と宇宙飛行士に危害を及ぼす、太陽から放射線の観測を担当し、危険情報をリアルタイムで宇宙機の運用の現場に届けていました。

 

東北大学 惑星プラズマ・大気研究センターでは、大型の電波望遠鏡を用いて、太陽の表面爆発、そしてそれによって引き起こされる太陽のプラズマ大気放出について、地球から遠隔観測を行っています。

 

私は、これまでの経緯もあって人工衛星を用いた宇宙空間での放射線粒子観測を行うと共に、地上からの電波観測と組み合わせる事によって、太陽放射線の発生予測につなげて行こうと、惑星センターの先生方と太陽放射線の研究に取り組んでいます。

 

そんな折、国連主催の宇宙天気ワークショップが、去る3月の最初の週、福岡県で開催されました。共催した九州大学・国際宇宙天気研究教育センターの先生方に協力しようと考え、東北大学から賛助金を頂き、国連ワークショップに協賛をさせていただきました。

 

このような国連主催のワークショップは、実は、JAXAの宇宙飛行士でおられる土井隆雄さんが企画されています。土井さんは、数年前から国連宇宙部・宇宙応用課長として、ウイーンの国連本部で宇宙技術の普及の仕事をされています。

 

私は、2011年から国連宇宙平和利用員会の宇宙天気専門家会合の議長を仰せつかっていて、土井課長とは年に2回ほど会っていました。そして、日本で宇宙天気のワークショップ開催のお話を伺い、お手伝いしたいと思いました。

 

ワークショップには、世界30か国から研究者が集まり、大変活発な発表と議論が続きました。九州大学の素晴らしいホスピタリティのお蔭で、参加者はとても満足した1週間だったと思います。

 

今後は、場所を別のところに移して、宇宙天気ワープショップが開催されて行きますが、太陽研究の一つの社会貢献(宇宙の安全な利用への貢献)として、宇宙天気は確かに存在していると、あらためて感じました。

                                                                                            (小原隆博)

[BACK TO TOP]

2015年3月27日

学位授与式

3月25日に2014年度の学位授与式が行われました。

今年度、本研究室では学士4名、修士3名、博士1名が無事に学位を取得いたしました。

卒業された皆さんおめでとうございます。

新天地でのご活躍をお祈りいたします。

また進学された皆さんは、ぜひ今後の研究活動に精進していってください。

平成27年3月吉日

[BACK TO TOP]