2019年11月 5日

第146回SGEPSS総会

熊本で10月23~27日に行われた第146回SGEPSS総会および講演会に参加してきました。SGEPSSは地球内部から中層大気、超高層大気、さらには惑星や太陽までを幅広い対象の科学研究を進めています。PPARCからも沢山の学生とスタッフが参加しました。それぞれの研究テーマにおいて、最新の知見や今後に役にたつ有益な情報、人的交流が出来たこと思います。若い人たちの熱意も高く、ポスターセッションも盛り上がっていました。懇親会では、ホストの先生が「熊本ではどこでも掘ればおいしい水がでるから水を買うなどとんでもない。だから酒もうまい。」と言っていました。(文責:坂野井)

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2019年10月28日

水星探査機BepiColombo、順調に飛翔中 2019秋

(文責:笠羽)

日欧合同水星探査 Bepiくん、打ち上げから1年を経て、順調に飛翔中です。

打ち上げ射場のあるKourou(フランス領ギアナ)では、Ariane Spaceから「忙しいよ・場所がないよ」ということで「探査機チームのパーティーは無し」でした。このプロジェクトが成立する前、20世紀末からずっと関わってきた人たちも含め、全体のパーティーは必須です。
この公式セレモニーとして、10/14(月)-18(金)、オランダ・ライデン近郊にある欧州宇宙機関・宇宙技術センター(European Space Technology Center, ESTEC)で、祝賀会を含む「全体サイエンスWorking Team会議」が開催されました。

ちなみに、この直前の土日は台風19号に見舞われ、私達PPARCでも飯館観測所(飯館村の北西端近くにあります)へ続く林道が被害を蒙りました(http://pparc.gp.tohoku.ac.jp/ourlab/2019/10/19.html)。
私は日曜出国予定だったのですが。「台風一過になりそうだが・・・仙台から成田空港まで 日曜朝に移動できる保証がないぞ・・・」と思い、KLMからのお知らせもあり土曜朝便に変更。ところが金曜になり「ANA・JALは全便欠航」のニュース。KLMは何も言ってこないが・・・と不安を感じつつ深夜に成田まで。その間も「土曜は10時以降、成田近郊のJRは全停止」といったニュースが入ってきます。私の乗る飛行機は、金深夜にアムステルダムを出たことは確認。
「降りられるなら飛ばすということか? 飛ばない場合、10時前に解放いただけないと空港ロビー泊になるぞ・・・」と思いつつ、早朝にへ。結果的に、あっさり「飛びました。飛んでしまえば空は安定でしたが・・・(その後の大変な状況は、アムステルダムを降りるまでわからず。)

EGo1upVU0AAfMwH.jpeg出発直前のKLM便 @ 成田空港 10/12(土)朝。実に閑散としていました。

土曜に着いてしまい、1日空いてしまったため、ベルギー・リエージュ大に先日移ったばかりの青木くん(東北大・惑星大気物理のOB)の来訪も受けていろいろ議論・相談事もこなしつつ、シーボルトの博物館を初めてふらっと眺めたりという、割と有益な時間を使うことができました。
シーボルトの旧宅そのものが、彼がお持ち帰りになった江戸時代後期の武具・動植物標本や医学資料・美術品・・・に溢れた、小さいよい博物館でした。
なお雑誌は江戸時代のものではありません。(オランダ語「日本アニメの月刊誌」。よく月刊で出せるな・・・・)

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本業であるサイエンスチーム会合は、この春に東京スカイツリーを会場に行われたサイエンス会合以来です。これまで初期試験などで忙しかったみなさまが集合し、その一段落をお祝いする会でもありました。私が責任者を務める Plasma Wave Investigation(PWI: 木星探査機JUICEのRPWIチームとかなり被ったメンバー構成です)も順調に「打ち上げ後の予定手順」をすべて終了しました。
 写真は、日欧メンバーを前に講演する相澤さん(同じく東北大・惑星大気物理のOG)。この4月から仏ツールーズで活躍中です。写真では小さいですが、以下略。

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会場で全体写真を取ることもこうした会議では重要。水星の到着予定は2025年。それまでにはまだまだ時間がかかります。発足からすでに20年近くなるPWIチームでもすでに何人もの方々がこの世を去られています。金星・火星というお隣とは違い、より遠くへ行く惑星探査機にとってこの「人間にとっての時間の壁」の克服はとても重要な課題なのですが・・・みなさま、よく寝て、よく食べ、よく遊び、そして健康を大切に。これまで関わってきた&現在関わっている人は、この何倍にもなります(PWIチームですと、来ていないメンバーが10倍はおりますし。)
この会合を経て、BepiColomboは、来年4月の地球Flybyに向けて準備に入りました。続報はまたその折に。
https://www.cosmos.esa.int/web/bepicolombo-flyby  [実際のフライバイ日付は、ここからまだ動く予定です。]

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2019年10月18日

台風19号来襲による観測所への影響

 2019年10月12~13日に上陸し東日本を縦断した台風19号は南東北の宮城県、福島県にも甚大な被害を与えました。本センターでは宮城・福島両県に複数の観測施設を保有しており(宮城:川渡・女川・米山・蔵王、福島:飯舘)、台風の通過後は各観測施設への影響確認を行ってきました(風・雨の程度が甚だしい台風の場合は、その都度影響確認を行っています。今年は9月9日に上陸した台風15号通過後にも行いました)。台風19号は、宮城・福島の各地で10月の平均降雨量の2~3倍の雨が12~13日に集中する記録的な大雨となりましたが(飯舘の場合、2日間の降雨量は330mm以上)、この雨量は2015年9月9~10日に来襲した2015年の台風18号の時以来の値でした。2015年の台風時には、山間部にある飯舘観測所では直径50cmを越える木が観測棟に倒れかかり、屋根を破損させるとともに、麓から観測所に至る林道が流水で抉れ、車の通行が不可能となる等、観測運用に大きな支障が生じました。今回もこの"懸念される降雨量"となったため、不安を抱えつつ、各観測所の被害調査に出向きました。

 その結果、観測所自体には直接的な被害は生じていませんでしたが(10月17日確認分まで)、飯舘観測所については、残念ながら、観測所にいたる林道の急傾斜域に流水による路面の抉れが再発しており、車での通行が不可能になっていました(写真参照)。今回は、台風の到来前に、これまでの台風等によりダメージを受けていた林道の流水跡の補修と路上の流水を逃がす"水切り"の整備を行い、ある程度の来襲に備えてはいました。しかし、その対策では今回の台風に伴う大雨・流水による影響を回避することは出来ませんでした。

 飯舘観測所では、今後、大型アンテナの修繕工事が予定されており、林道の復旧が急務となっています。林道の抉れに対しては、人力での復旧は難しく、重機を入れ、修繕を行う予定です。また、安定した観測運用を行ってゆくためには、今後も覚悟せねばならないであろう甚だしい気象現象に対して、より積極的な防護策を施してゆくことがこれからの課題となります。

(文責:三澤)

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写真1.台風通過後の飯舘観測所に至る林道の状況。傾斜がキツい箇所約200mにわたって流水による抉れ(最深部~30cm)が生じていた。

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写真2.台風通過後の飯舘観測所に至る林道の状況。倒木(直径~25cm)も生じていた。

2019年10月 6日

東北大・宇宙航空拠点 第一回シンポジウム 「極限生命医学とインフラ研究から拓く未来の宇宙文明」(2019/10/5)

(文責:笠羽 [事務局として])

東北大・宇宙航空連携研究拠点は、前身の非公式連携組織 "宇宙航空研究教育連携委員会" が発展してできたもので、実際の活動は10年弱になります。
とはいえ、公式に大学の組織図に載った新組織発足(2019/4から)。
これを記念して、全学シンポジウムを「まだ野のものとも山のものともしれない学部生諸氏、そして連携範囲の一部だけは見えているが全体はわかっていないであろう大学院生諸氏」のために開催いたしました。

シンポジウムは、流体研・生命科学研究科の皆様に支えて頂き、東北大・片平にて約90名の参加を頂いて賑やかに行われました。
賑やかであったがために、茶話会の開始は予定より大幅に遅れてしまいました。
でも、みなさま有益であったようで何よりです。対象を学部生以上としたがために、講師側も聞く側も、それぞれ専門外ではあるものの「宇宙の現場を共有する仲間」に対して訴求力のある講演・質問を行おうとしたため、予想していたよりさらに刺激的な会となりました。
実際、このシンポジウムのあとにいくつかの共同研究の案なども出ています。

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プログラム。私は事務局として企画・雑用・質問を担当したわけですが、この企画は、意図的に「理の学部生・院生」に向けたメッセージでもないわけでもないです。というのは、「対象として調べる」「調べる手段を開発する」という性格で宇宙と太陽系空間を眺めるScience畑の方々から見て、この現場を「利用の場」「生存の場」「産業の場」「アクセスの場」として共有している方々がどう活動しているか、という観点を知ることは、別な視点から同じものをみる、という意味で大変重要だからです。(話をするのをサボった、というわけではありません。。。。)

講師の皆様、最新話をご提供いただきありがとうございました。
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進行中の本学-JAXA共同の研究活動に絡んだ中では、(左図) 「生命/医学」でJAXA宇宙医学生物学G・古川聡グループ長/宇宙飛行士、(右図) 「ロケット工学」でJAXA角田センター・吉田誠所長 にも直接ご報告頂き、学生/院生を強く刺激頂きました。

学内からも、 国際宇宙ステーションを舞台とした最新医学研究、金属3Dプリンタによる宇宙工場の可能性、小型衛星が拓く世界と日本そして東北大の新宇宙活動。 また、 院生に開かれた国際宇宙大学への扉、 学部生による活発な宇宙サークル活動の紹介も行われました。

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来年の企画検討に入っております。今回登場しなかった「法・社会の面」「航空技術の面」「計算科学との連結」「環境・防災との連結」・・・(と「理」=科学観測の将来提案検討状況!)などの案が挙がっております。お楽しみに!

2019年10月 3日

欧木星探査機JUICE搭載RPWI: 「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」と共に木星へ (2019/10/3)

(文責:笠羽)

木星氷衛星探査計画JUICE (Jupiter Icy Moon Explorer)は、欧州宇宙機関(ESA)による大型将来惑星探査です [https://juice.stp.isas.jaxa.jp/]。2022年の打ち上げを目指し、現在開発が進められています。東北大は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)を介して、この探査機に搭載される観測装置チームの1つ、電波・波動観測装置RPWI (Radio and Plasma Wave Investigation)を提供します。私が日本側代表者を務めており、東北大のみならず、数々の研究者が参加してスウェーデン・ポーランド・フランスとの共同で開発を進めてきました。

このRPWIのチームロゴとして、コンペによって勝ち抜いた元提案(by 仏・IRAPのNichlas Andre)は、「ソニック・ザ・ヘッジホッグ」(©SEGA)を活用したものでした。ソニックは宇宙をも舞台に活躍する音速ヒーローで、欧州メンバー、どなたでもご存知。
さてどうしたものかと、チーム代表であるJan-Erik Wahlund博士(スウェーデンIRF-ウプサラ)のご子息に原案を描いて頂き、東北大からセガ社へ打診させていただいたきました。幸いご快諾を頂き、そればかりではなく、RPWIのチームロゴデザイン自体を無償でデザインまでして頂けることになりました。誠に感謝に耐えません。

RPWIは、木星と衛星が織りなす太陽系で最強力な電磁場活動を捉え、また木星が放つ強力な電波の反射波を用いたカリスト・ガニメデの氷地殻とその地下に潜む「海」の検出を目指した観測を行います。このため、ロゴにはその象徴である稲妻マーク、そしてスローガン「電気を帯びるもの。また揺れ動くもの。すべては我らのもの!」が刻まれています。

RPWIチームは、このロゴとともに、2022年(予定)の打ち上げから始まる長い木星への旅に、我々JUICEメンバーの一員として参加することになります。
木星への到着は2029年の予定です。
(残念ながら「宇宙で問題なく使えると既に承認された材料以外は、ハードウェアにつけてはいけません」という制限があるため、ソニック君ステッカーが貼り付けられて飛んでいく、というわけではありません。例えばインクに起因するガスが光学系を曇らせたりする恐れを完全には排除できないためです。このあたり、ご期待いただいた方々には大変恐縮ではございますが、我々もプロなので・・・このあたりは、一切の妥協なく、最高の性能を目指して挑みます。)

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セガ社からご提供頂いたJUICE-RPWIチームロゴ。他に正方形バージョン・白黒バージョンなどがあります。(©SEGA)

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JUICE探査機(©Airbus DS)。RPWIは、4本の電子・電場センサーLP-PWI(3-m長)とMAG boom(10.5-m長)に搭載される電波センサーRWI・磁場センサーSCMをその「目」として木星へ向かいます。センサー群は、LOGO上で「探査機から延びる赤い線」として見えます。

<SEGA official>  http://sonic.sega.jp/SonicChannel/topics/information/20191001_002024/
<東北大 official>  http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20191001-10464.html

10/21に、朝日新聞で紹介されました。
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「ソニック」が木星探査機ロゴに 研究者がセガに打診  https://digital.asahi.com/articles/ASMBL6HQ4MBLULBJ01D.html?iref=comtop_latestnews_03

2019年10月 1日

Austria Graz出張:欧木星探査機JUICE / RPWI 全体チーム会合 (2019/9/23-27)

(文責:笠羽)

パリ天文台でのお仕事を経て、PPARCの笠羽教授・三澤准教授・土屋助教、および後から合流した宇宙地球電磁気の加藤教授の4名で、Austria は Graz で行われました「欧木星探査機 JUICE / RPWI 全体チーム会合」に出席してまいりました。
Grazは、町の中央に古城がそびえたつ、古風な街ですが、オーストリア第二の規模。Wienから電車で2−3時間、イタリアへの途上にあります。

会合は、この町にある オーストリア科学アカデミー・宇宙科学研究所 -- Institut für Weltraumforschung (IWF) で、5日間に渡って非常に密度濃く行われました。
JUICEは、2020秋口から始まる探査機の全体試験に向けて、各チームで急速にフライトモデルを製造しつつあります。この会合では、(1) フライトハードウェアの製造・試験状況と来夏に向かうスケジュール、(2) この上で動くソフトウェアのシミュレータによる開発・試験の状況、(3) 深宇宙へと飛翔するにたるこれらの品質保証、(4) 木星周回、ガリレオ衛星フライバイ、そしてガニメデ周回における科学観測の提案検討・・・ 
我々は、毎週、テレビ・音声会議で相当量の議論を定期的に積んできてるのですが、それでもこれだけの議論・確認事項が出るのか・・・ということで、疲れましたが、実際には、この先がもっととても大変ではあります。

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オーストリア・IWFチームが開発した「JUICE探査機の電波特性試験用」の模擬機。結構大きく、しかも金メッキされておりピカピカです。
我々のアンテナが持つ電波指向特性を計測し、計算機シミュレーションと合わせます。実際の確認は、打ち上げてから太陽電波などを使って行います。

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水曜日に撮影された「RPWIチームメンバー集合!」の写真。31名写っていますが、ここに来ていないメンバーも確実にこの倍はいます。
こうした観測機器チームが11あり、さらに探査機そのものを製造しているチームがおり・・・全体では軽く200名は越えるメンバーの努力の結晶です。

なお、欧メンバーは金夕にはそれぞれの帰途へとついたのですが、ユーラシア大陸を横断してはるばる帰る日本組と、土曜朝に帰ることにしたJan Bergman (スウェーデン)は、地元IWFの Georg Fischer (金ピカJUICEの開発・試験をした人でもあります)に、Graz市内を案内いただきました。
古い城・古い教会・古いパン屋・・・・とのんびり歩いて回ったのですが、Scientistsとしての目玉は「ヨハネス・ケプラー」にまつわる場所の探訪。
ケプラーは、最高の眼視観測者(望遠鏡がフルに使われる直前の時代でした)であったチコ・ブラーエの膨大な火星の位置観測データを引き継いで、「惑星は楕円軌道で太陽の周りを巡っている」ということ発見した人です。この発見は、「楕円軌道を回るには、逆自乗力が太陽と惑星の間に働けばよい」というニュートンの「重力の発見」へとつながりました。
このケプラーさん、若かりし頃、神学校(グラーツ大学の前身?)の先生としてGrazに赴任し、働いています (1594?-1600?。関ヶ原の戦い前夜ですね。)「とてもいけてない先生だった」との地元民評。

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「ケプラーの旧宅」であることを示す表示。今は、単なる「写真店の倉庫」の奥。Georgいわく「この上がGraz写真クラブ?で、子供の頃通っていたのでよく知っている」とのことだが、普通は絶対にこんなところにそんなものがあるとは気がつくわけがないぞ。

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城の一部をなす公園には、ケプラーの碑。その前には「ケプラーの第三法則」を示す花壇が。

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木星を目指す人々と、ケプラー氏。ひとまず、このおじさんの見つけた事実なくしては、我々は木星には行けていません。彼に乾杯を捧げ、みなさんでビールを飲んで夕ご飯を食べ、解散しました。

帰国して次の日、9/30(月)には我々が仕上げた「電波プリアンプ・フライト予備品の出荷審査会」。無事終了し、Grazで行った約束の1つを果たしました。
次いで、実際にフライトするプリアンプの耐環境試験に突入。10/1には振動試験に立ち会い。10/4-10/10には温度試験。。。
と、相変わらずブラック労働の日々を、みなさん(含む大学院生)と繰り広げております。

2019年9月21日

世界最大のHF~VHF帯電波観測装置"NenuFAR"訪問 (2019/9/19-20)

(文責:三澤)
2019年9月19,20日に、フランスのパリ天文台が開発を進めている世界最大[1]のHF~VHF帯アレイ式電波観測装置"NenuFAR[2]"(nenufarは、スペイン語で"睡蓮"の意味。地上に多数展開されたそのアンテナ群はまさに湖上に並んだ睡蓮のよう!➡写真参照)を、C領域4名のスタッフが訪問しました。NenuFARは周波数10~85MHzの自然電波を観測することを目的に開発されているアンテナ・アレイで、直径2mほどの小型アンテナが完成時には1800個以上並び、その総有効開口面積は30MHzでは62,000㎡にもなる、この周波数帯では世界最大1のアンテナです。このアンテナは、パリの南約200kmにあるNancay観測所で建設が進められており、今年の7月からは早期運用が始まったところです。Nancay観測所は、広大な敷地に10MHz~3.3GHzを観測する多様なアンテナ群が展開されており、NenuFARはその中でもっとも低周波数且つ最大のアンテナです(Nancay観測所の特筆すべきはその電波環境(光環境も!・・・見事な天の川にも遭遇・・・)の静かさ! 携帯電話なぞ繋がりません・・・色々な意味で羨ましい・・・)。

今回の訪問は、日本の自然電波研究グループと長年の交流のあるパリ天文台でNenuFARプロジェクトを率いているPhilippe Zarka博士のご好意により実現したものですが、この訪問の目的はNenuFARでどのような、また、どのようにして国際共同研究を行い得るか、を議論するためです。9月19日にはパリ市内にあるパリ天文台で議論、その夕方にZarka博士自ら運転する車に同乗させて頂きNancay観測所に移動、9月20日はNenuFARの見学を挟んで朝から夕方まで議論を行いました。NenuFARは、地球電離層での反射・屈折を受けずに地球外からの到来電波が地上に到達出来る最低周波数である10MHzから観測出来ます。NenuFARの大口径アンテナで実現する、電波天文学的には極めて低いこの周波数での高感度観測は、私達C領域で長年の研究がなされてきた太陽系内の惑星・衛星や太陽に関連する微弱な電波を用いた研究は勿論、更には太陽系外の惑星や電波天体の研究等にとって、非常に魅力的です。

現在、世界の電波天文の観測分野では、50MHz以上での観測が可能な広大なアンテナによる国際共同観測研究プロジェクトSKA(Square Kilometre Array)が実現に向けて進行中であり、日本でもこのプロジェクト参画に向けた動きが始まっています。一足先に早期運用に入ったNenuFARはSKAよりやや低い周波数帯をカバーする装置で、科学目的面でも接続性・共通性を持っています(NenuFARはSKAの公式なPathfinderプロジェクトとしてSKA機構に認知されています[3])。私共は、高感度の電波観測での研究に関心を持つ多くの日本の電波観測者の方々とともに、フランス・パリ天文台が心血を注いで開発を進めてきた、電波観測研究の未来に繋がるこのNenuFARプロジェクトに如何に関わってゆけるかを更に考えてゆきたいと思っています(NenuFARに関心を持たれた皆様、私共にご連絡下さいますようお願いいたします)。

文責:三澤(電子メール:misawa_at_pparc.gp.tohoku.ac.jp)

・[1]:偏波特性を計測出来るアンテナとして世界最大。偏波特性とは、電波の持つ情報の一つで、電波の発生起源や、電波の伝搬路の特徴を伝える。

・[2]:NenuFARのwebサイト:https://nenufar.obs-nancay.fr/en/homepage-en/

・[3]:参照先:https://www.skatelescope.org/news/french-nenufar-telescope-granted-ska-pathfinder-status/

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パリ天文台Nancay観測所に展開されているNeneFARアンテナ群。

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NenuFARは19素子からなるMini Arrayの集合体。MiniArrayの信号合成部の説明を受ける東北大スタッフ(右側の3名)。左から2人目がNenuFARプロジェクト責任者のZarka博士。

2019年9月 8日

カナダとアラスカで宇宙からの高エネルギー電子を測る (2019/8/25-9/7)

(文責・平井、土屋)
アラスカやカナダに行くとオーロラを見ることができますが、宇宙から地球の大気に降り込んでくる超高エネルギー電子を観測するのにも最適の地です。大気に降込む超高エネルギー電子はオーロラのように目で見ることはできません。その代わりに、地表から標高60km-90kmの地球の大気を電離させるので、電離層を反射する低周波電波を使うと観測することができます。

8月25日~9月7日に土屋と平井で、カナダとアラスカに行きました。目的は、低周波電波受信機とアンテナの設置及びメンテナンスです。

前半の1週間の行き先は、装置の新規設置のため、カナダのマニトバ州にあるピナワです。ピナワには、カナダ宇宙庁が運用・管理している地上観測サイトがあり、すでに磁力計やリオメーターが設置されています。設置作業は、現地のエンジニアの方に協力していただき、予定通りの日程で設置することができました。設置後、データを取得できていることを確認し、ピナワでの任務は無事終了しました。今回初めてゼロから装置の設置を経験しました。ピナワで得られたデータで新しい発見を目指します!

後半はアラスカに移動しました。アラスカのフェアバンクスには、既に電波受信機やアンテナが設置されています。当初は、観測ソフトウェアの更新と校正作業のみを行う予定でしたが、行ってみるとアンテナを支えるロープが切れて、アンテナが傾いていました!予定を急きょ変更して屋外でのアンテナ修理作業からはじめ、予定していた作業をすべて日程内に終えることができました。

今回の出張では、アラスカに到着した日の夜にオーロラを見ることができました。今回見られたオーロラは、あまり激しいものではなかったので、ぜひ次機会があればブレークアップを見たいです。(オーロラの写真はぼやけてしまったので、今回は載せないことにしておきます...。)

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ピナワの観測サイト。まだなにもありません。作業中の土屋とエンジニアのBrendanさん。

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設置完了したループアンテナ。

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普段の研究で使用しているデータを取得している誘導磁力計を見せてもらいました。

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中にコイルが入っています。ファラデーの法則(コイルを貫く磁界が変化すると起電力が発生する)に従って、地磁気変化を計測しています。

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アラスカのモノポールアンテナ(修理後)。柵を新設。

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アラスカは紅葉の季節でした。とってもきれい!

2019年9月 3日

多波長観測で捉えた木星の嵐 〜 すばる望遠鏡赤外線カメラによる観測 (2019/9/3)

(文責: 笠羽)

東北大PPARCとNASA/JPLのメンバーで行った2017年1月の国立天文台・すばる望遠鏡による木星中間赤外線観測は、世界的な木星観測キャンペーンの一翼を担いました。この観測で、木星大気を吹き荒れるストームの3次元構造を分解し、地球の赤道域でも見られ、台風の機構としても知られる「湿潤対流」で説明できることを明確に示しました。

今回の成果は、アルマ望遠鏡による干渉計観測を軸になされたもので、すばる望遠鏡の他にもNASAハッブル宇宙望遠鏡、米ジェミニ北望遠鏡 8-m、WMケック望遠鏡10-m、欧VLT 8-mという世界最大級の望遠鏡群が参加しています。電波〜可視光に跨る多波長観測は、嵐を高度方向に分解してその3次元構造の解明を可能とします。惑星探査機では困難ですが、他惑星の大気現象を地球と比較するには必須の手法であり、この効果を示す素晴らしい例となりました。

本研究は、他に国立電波天文台(NRAO)、NASA/GSFC、クレムソン大、メルボルン大、レスター大の共同で行われました。この成果をまとめた論文は、Imke de Pater(UC Berkeley)を主著者としてAstronomical Journalで出版されます(暫定的にオンライン公開中: https://arxiv.org/abs/1907.11820)。

我々が観測を行ったすばる望遠鏡の中間赤外線観測装置COMICSは、2020年7月末に運用が停止されます。日本がこの分野へなせる貢献機会が限られてしまうことが残念ですが、それ以上にこの停止は「大望遠鏡に常設される中間赤外観測装置」がなくなることも意味します。この波長帯は重量・電力等が限られた探査機での観測が難しいため、現在木星を周回中のJuno探査機では観測がなく、地上観測による補完が期待されていました。

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すばる望遠鏡中間赤外線カメラCOMICSが捉えた木星。明るい部分がアンモニア氷雲(a)。大赤斑(GRS)やオーバル(BA)は定常的な巨大構造とともに、各矢印が示す白斑・暗斑といった木星の巨大嵐が見えています。(Imke de Pater et al.)

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ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたRGBカラー図との比較(Imke de Pater et al.)

<Links>
東北大・理サイト  --  
http://www.sci.tohoku.ac.jp/news/20190903-10422.html

国立天文台すばる望遠鏡サイト -- 
https://subarutelescope.org/Pressrelease/2019/08/23/j_index.html (日) 
https://subarutelescope.org/Pressrelease/2019/08/23/  (英)

国立天文台アルマ望遠鏡サイト -- 
https://alma-telescope.jp/news/jupiter-201908 (日) 
https://alma-telescope.jp/en/news/jupiter-201908  (英)

UC Berkeleyサイト 
https://news.berkeley.edu/2019/08/22/storms-on-jupiter-are-disturbing-the-planets-colorful-belts/
https://news.berkeley.edu/2016/06/02/new-radio-map-of-jupiter-reveals-whats-beneath-colorful-clouds/

2019年8月 2日

オープンキャンパス2019

今年も7月30日、31日の2日間、東北大学のオープンキャンパスが行われました。 今年も昨年に引き続き、理学部キャンパスの最奥となる物理A棟4階を会場として、宇宙地球物理学科・地球物理学コースのブースにおいて、 大学院生や教員による日頃の研究の説明や体験コーナーを設けたりしました。 地球物理のブースには、2日間でのべ1200人を超える方々にご来場いただきました。大学進学を控えた近隣の高校生だけでなく、 研究室配属を控えた学部生や家族連れの方々に足を運んで頂き、大変ありがとうございました。 (鍵谷)

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